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桜井さんはスタッフらが手作りした手芸品を通じて店を身近に感じてもらおうとする

桜井さんはスタッフらが手作りした手芸品を通じて店を身近に感じてもらおうとする

イオンリテールが本州・四国に約270店を展開する手芸用品店「パンドラハウス」。その中で、イオンモール東久留米店(東京都東久留米市)は2019年度の売り上げが2位になった有力店だ。率いるのは27歳の店長、桜井夏奈さん。秘訣は11人のスタッフの意欲を引き出す「全員参加」の売り場づくりだ。

6月中旬、イオンモール東久留米にあるパンドラハウスを訪ねると多くの来店客でにぎわっていた。大勢の注目を集めていたのが中央部に設けられた手作りのマスクコーナーだ。

新型コロナウイルスにより夏でもマスク着用が求められる新たな生活スタイルに合わせ、店内には縁や生地をアレンジした色とりどりのマスクが展示されている。同店にはこうした手芸品の見本が随所にある。いずれもスタッフが手作りしたものだ。

パンドラハウスでは手芸に使う生地や糸、クラフトといった様々な商材を取り扱う。桜井さんは「商品をただ並べても何が作れるかイメージしづらい」と見本の展示を重視、来店客に手芸を身近に感じてもらうことに取り組んでいる。桜井さんは11人のスタッフに、どんな見本を作るかという指示を出す。一方で「売り場作りを決めるのは私でも、手芸の知識のあるスタッフと話し、意見を求めて教えてもらっている」と明かす。

「全員参加」が桜井さんのモットーだ。自分のイメージ通りに直接作ったり、特定のスタッフに作成が偏らないように気をつける。「1人だけで売り場を作ると全部同じものになってしまう」からだ。

手芸は作る人によって好みや風合いが異なる。来店客が作りたいとイメージしているものもそれぞれだ。だからこそ各スタッフで様々な見本を作ってもらう方が価値がある。「重なり合う方がいい売り場になる」。そう話す桜井さんの役割は交響曲の指揮者に近いのかもしれない。見本作りを任されることはスタッフの働く意欲にもつながる。

新潟県出身の桜井さんは大学卒業後の13年4月にイオンリテールに入社。16年秋から東久留米店の店長を務めている。転機となったのが15年からの東京・板橋での初の店長経験だ。新規出店で初めての部下も持った。売り場づくりに顧客獲得、スタッフ教育など思い悩む事も多く「自分1人ではできないことに気がついた」。

桜井さんの売り場作りへの来店客の評価は高い。東久留米店で展示する見本の数々が反響を呼び、来店客から依頼されて講習会を開くこともある。ある時にはイオンモール内のイベントスペースで50人を集めたこともあった。そうした活気ある売り場作りが19年度の売り上げ全社2位という成果にもつながった。

「もっと手芸全体のファンを増やしたい」と桜井さんは意気込む。重視するのは初心者の取り込みだ。商品のわかりやすい説明書きを増やすなどして、上級者から初心者まで、誰もが楽しめる売り場作りを目指していく。

(古川慶一)

[日経MJ2020年7月6日付]

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