直接メンタルケアをしなくても、感染管理が十分に行われていることや、院内の新型コロナ患者の受け入れ状況が把握できる体制を整えることも医療スタッフの不安を解消し、メンタルサポートにつながる。

東京労災病院では、安全な場所と危険な場所を区別する「ゾーニング」を院内で徹底したほか、防護服の着脱方法の指導、感染予防に関する研修を行うなどして院内の感染管理を徹底した。さらに電子カルテ上で新型コロナ患者数を把握できるようにした。

和歌山ろうさい病院も1日2回、職員にメールを送信し、刻々と変わる院内の患者受け入れ状況のほか、県内での発生状況、健康管理を求める内容などを発信している。さらに感染疑い患者や職員には積極的にPCR検査を行い、安心に働ける環境を整えている。

ただし、すべての病院が十分なサポートを提供できるとは限らないのも実態だ。体制が整っていない医療機関に勤務する医療スタッフは外部の相談窓口を活用するのも選択肢だ。

医療事故を起こした人のケアを行ってきた一般社団法人「Heals(ヒールズ)」は3月から新型コロナ対応で悩みを抱える医療スタッフや遺族の相談を無料で受け付ける。

同法人の中心メンバーの一人、早稲田大学大学院法務研究科の和田仁孝教授は「特に院内で生じた紛争(コンフリクト)は内部組織に相談できず、『受け皿』が必要」と話す。同法人の無料相談では1~2時間をかけて相談者の話を聴く。

これまでに3件ほど相談があった。院内の感染対策に強い不安を感じ、相談してきた事例や、地域のPCR検査のボランティアに参加しようとしたところ職員から強い反対にあい、悩んでいるケースもあった。必要に応じて臨床心理士や精神科医師、弁護士を紹介することもあるという。

同法人の相談員で看護師の永尾るみ子氏は「解決策を押しつけるのではなく、傾聴した結果、ご自身が方向性を決めていくことが大事。気付きが生まれ、前向きになっていただくことがゴール」と話す。

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日赤がガイドライン 差別・偏見への対処も指南

日本赤十字社は3月、「新型コロナウイルス感染症に対応する職員のためのサポートガイド」を策定し公開した。日赤職員向けだが全国の医療機関での活用も想定。ウイルスによる症状だけでなく、職員の不安や恐れ、差別・偏見に対処するよう求めている。

ガイドラインは新型コロナウイルスは「3つの感染症」を起こすと指摘する。(1)病気そのもの(2)ウイルスが見えないことや治療法が確立されていないことへの不安や恐れ(3)嫌悪や差別、偏見――の3つだ。特に偏見・差別などを巡っては、感染リスクが高い環境に身を置く医療従事者は、周囲との関係が悪化するなど社会的な影響を強く受ける可能性がある。

実際のサポートではスタッフの安全確保、セルフケア、家族や同僚からのサポート、組織からのサポート――4つを重視するよう推奨。相談体制だけでなく、病院が組織として安心して働ける環境を作れるかが対策の鍵を握っている。

(満武里奈)

[日本経済新聞朝刊2020年7月6日付]

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