小児科で治療中の慢性患者、成人診療科に移る不安軽く

厚労省は日本小児科学会の提言を受け、個々の病気の特性などを踏まえた「疾患別ガイド」の作成や移行期医療が必要な患者数の調査などのモデル事業を15~17年度に展開。18年には都道府県に移行期医療支援に関する通達を出し、全国に移行期医療の支援センターの整備を促した。

一方、岩手県での取り組みは、小児患者が大人になるまでに自分の慢性疾患を医師に正確に説明できるようになることが目的だ。岩手医科大学(岩手県矢巾町)、NTT東日本岩手支店などが参加。岩手医科大付属病院が小児患者にアプリを提供し、今年1月に実証実験を始めた。

患者に貸し出したタブレット端末の画面に現れるキャラクターが治療や検査の内容について説明したり、励ましたりする。これにより自分の疾患を正しく理解して不安が軽減できるか、治療に前向きになれるかなどを検証する。

NTT東日本では「移行期医療を支える新たなツール」と位置づける。現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響などで実験は中断しているが、終息後に再開を目指す。

移行期医療の普及に向けた動きも活発だ。厚労省は国立成育医療研究センターを事務局に、移行期医療支援者養成研修事業を展開し、テキストの作成などに取り組んでいる。

各医療機関も小児疾患の患者に成人後の診療科変更に関するパンフレットを作成するなど、相談を呼びかけている。

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医師の連携など課題

移行期医療の重要性は徐々に認識されつつあるが、小児科から成人診療科への転科には課題も多い。多くの医療関係者がポイントとして挙げるのは、患者の理解や医師の連携などだ。

厚労省が18年に実施した小児慢性特定疾病の患者(20歳以上も含む)とその保護者を対象にしたアンケートによると、成人診療科への受診に関し「不安・困難がある」と回答した人は57%に達し、「不安・困難はない」を上回った。

その理由としては、「受診できる診療科があるかどうか不安」が最も多かった。次に「小児科受診中に自分(または子供)の病気のことをもっと知っておきたかった」が続いた。

千葉県移行期医療支援センターの竹内副センター長は「移行期医療の実施は一般的な医療連携よりも複雑」とみる。その理由として、患者を受け入れる地域の医師に役割を理解してもらうことや、患者とその家族に混乱なく転科してもらうことの難しさを挙げる。同センターでコーディネーターを務める市原章子氏も「小児科医と成人診療科医の間に、治療に対する考え方の違いがある」と話す。

厚労省は移行期医療支援センターを全国で整備したい考えだが、今後普及していくかは未知数だ。これまで注目を浴びてこなかった医療分野だけに、その意義を患者や医療関係者に広く周知していくことが重要だろう。

(西村正巳)

[日本経済新聞夕刊2020年6月29日付]

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