半導体製造の世界標準探る 社内にマル秘で受託製造もローム社長 松本功氏(上)

■ロームの松本功社長(59)は1990年代、半導体製造工程の技術開発に取り組んだ。

ロームは当時、半導体業界の「異端児」と呼ばれていました。最先端のメモリーとは一線を画し、カスタムICという独自路線を歩んでいたからです。

一方でメモリーや先端ロジック品を手掛けていなかったため微細化などで後れを取り、歩留まり改善がうまくいかないという問題も浮上しました。そこで94年、ロームの製造プロセスを世界標準にするプロジェクトに携わることになりました。創業者の佐藤研一郎さんも問題意識を共有していました。

■秘密裏に半導体の受託製造ビジネスに参入する。

課のメンバーは10人くらい。私たちは最先端の製造プロセスを求めて、米カリフォルニアに飛びました。世界標準の設計手法を持っていた米コンパスデザインオートメーションのツールを京都のローム本社に導入するためです。2カ月に1度は米国に出張し、製造ラインの設計に詳しいエンジニアを京都に招きながら議論しました。

そこまでは順調でしたが、実際の導入では社内から批判が噴出しました。当時のロームは良くも悪くも「我流」の会社。高い利益を生んでいるところに別の製造工程を持ち込む必要があるのか、というのです。

そこで考えた秘策が、ファウンドリー(半導体受託生産)ビジネスへの参入です。ロームの製造工程を世界標準に合わせれば、今のTSMC(台湾積体電路製造)のように、半導体を設計する企業から製造を請け負うことが可能になる。ビジネスの幅が大きく広がるわけです。公にしていませんでしたから、社内で知る人は少ないと思います。

■行動で生産現場の改善につなげる。

米国にはそのころ「デザインハウス」と呼ばれる半導体設計会社がたくさんありました。訪ね歩いてロームの取り組みを説明したところ、「面白い会社だ」と言って相次ぎ製造を委託してくれました。

まつもと・いさお 85年九州工業大卒、ローム入社。13年取締役。今年5月から現職。福岡市出身。

実際に仕事が舞い込むと、ファウンドリーに疑いの目を向けていた製造現場も動かざるを得なくなる。これが私の狙いでした。「このやり方だと歩留まりが悪い」などと顧客から叱られると、現場はロームの製造手法の問題点を否が応でも認識することになります。すごい刺激になりました。

コンパス社から世界標準の製造プロセスを導入する取り組みで社長賞を取りました。ファウンドリーは2~3年で終わり受注もごく少量でした。しかしローム流のやり方を改善し、グローバルで通用するものにできたと考えています。

あのころ……

NECや東芝など1980年代に隆盛を極めた「日の丸半導体」は90年代に入り、存在感を失っていく。世界シェア8割を握ったDRAMでもサムスン電子など韓国勢の攻勢にあう。そのなかでメモリーを手がけず特注のICで成長したロームは、逆張りで高収益を実現し注目が集まった。

[日本経済新聞朝刊 2020年6月23日付]


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