夏こそ大掃除、油汚れ落としやすく 洗剤を簡単手作り
生活研究家 阿部絢子
「大掃除」は暮れの12月にするものというイメージが強い。なぜなのだろう。正月に向けた準備に入る「正月事初め」といえば12月13日。まずはすす払いだ。年神様を迎えるため、家中を清める。年神様に五穀豊穣(ほうじょう)や農作業の無事を祈った昔からの習慣は今も残り、暮れといえば大掃除、という考え方が引き継がれているのではないか。
しかし多忙、多様な現代の暮らしに暮れの大掃除は合わなくなってきた。いっそのこと夏に動かすべきだと、私は思う。
理由は単純。汚れの質の変化にある。昔はすすだったが、今や主な汚れは油や水あかによるもの。時間や労力をかけずに取り除きたいが、なかなか難しい。しかし面倒な汚れ、なかでも油汚れが高温もあって緩み、掃除する私たちの体が動きやすく、休暇中の家族の手も借りやすいのが夏。まさに大掃除にうってつけの季節だ。
ただし30度を大きく超えるような温度のときは要注意。大掃除をしていて熱中症になるのはいただけない。暑さ対策には十分気を配るようにしたい。
さて、夏の大掃除で最も落としたいのはやはり油汚れ。キッチンの換気扇、ガスレンジ、グリル、電子レンジなどに蓄積している。
早速始めてみよう。手順としてはまず、換気扇であればパネルやシロッコファン、ガスレンジでは五徳や汁受け皿、というように外せる部品を外す。流し台に大きめのゴミ袋を複数用意し、口を開いた形で敷く。それぞれに換気扇なら換気扇、レンジならレンジの外した部品をまとめて入れる。さらに汚れ落とし剤を、全体に行きわたるまで、満遍なく、たっぷりとスプレーする。
ここで使う汚れ落とし剤は市販品ではなく、手作りしてほしい。作り方は200ミリリットルの水に、液体せっけんと重曹を小さじ1杯ずつ混ぜ合わせ、スプレー容器に入れるだけ。手作りなんて大変だという方は店頭で手に入る油汚れ用の家庭向け洗剤でも。
スプレーした後、それぞれの袋をベランダや玄関先といった日光の当たる場所に置いておく。油汚れが日光の熱で緩むと、茶色の液体が溶け出してくる。置いておく時間は汚れの程度で多少違ってくるが、およそ30分が目安だ。
油汚れが緩んだら、古い歯ブラシや古いスポンジなどで汚れをこすり落としていこう。それから水で洗い流し、乾かす。
部品が取り外せない場所は油落とし剤で湿らせ、古い布で汚れをこすり、水を絞った布で拭き上げる。頑固な油汚れは前もって割り箸やスプーンの柄、スチールウールなどで削り落とし、その後で汚れ落とし剤を使うと効率がいい。
油汚れがたまりやすい場所には定期的に汚れ落とし剤を吹き付けておこう。汚れがひどくなるのを防ぎ、次の掃除の時短にもなる。
薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカー勤務後に消費生活アドバイザーに。家事全般や食品の安全性の専門家として活躍。「ひとりサイズで、気ままに暮らす」(大和書房)「ひとり暮らしのシンプル家事」(海竜社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2020年6月23日付]
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