梅雨どきは寝具のカビに注意 湿気を飛ばす一工夫
カビが生えやすい季節となった。浴室など水回りに注目する人は多いが、敷布団や掛け布団といった「寝床周り」のカビに悩まされている人も少なくない。寝具の適切なお手入れ法を住生活ジャーナリストの藤原千秋さんが解説する。
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ここ20年ほど、家事についてヒアリングを行っている。そのなかで際だって語られにくいのが寝具のお手入れだ。あまり習慣としていないということだろう。特に寝具にカビを生やしてしまった場合、人の口がますます重くなる傾向がある。
寝床のカビは敷布団や掛け布団だけではなく、ベッドのマットレスやフローリングにも及ぶ。カビは目に見える状態まで育つのに一定の時間がかかることもある。生え始めはただの汚れやシミのように見え、見過ごされやすい。だが、その間にもどんどん増えていくので、注意が必要だ。
就寝中の汗対策 タオルやラグで
まず心がけたいのは、寝具にできるだけ汗が染み込まないようにすることだ。カビは水分を好む。個人差はあるものの、一晩に出る汗の量は180~500ミリリットルにのぼり、寝具はカビの温床になりやすい。
おすすめは、シーツの上にタオルを敷き込むこと。頭や背中、腰の位置など特に湿りやすい位置に敷く。敷布団でも、ベッドで寝ている場合でも同じだ。敷き込んだタオルは2~3日おきに交換するようにしたい。
近年、フローリングに布団をじかに敷き、日常的に片付けない万年床が増えている。床と布団の温度差で結露が起こり、カビが発生しやすい。
フローリングに布団を敷くなら、床と布団の間にラグを挟むといい。ラグがある程度湿気を吸ってくれる。できればラグの上に吸湿マットも敷き、水分をそこで食い止めるようにしたい。ただ、この状態でも、万年床が続けばカビだらけになる。週に1度程度は敷布団やラグを天日干しするか、せめて壁に立てかけるなどして水分を飛ばす作業をしたい。
ベッドでも木材の土台が湿気を吸収しきれない場合がある。マットレスとベッドパッドの間に吸湿マットを敷くと、カビを防ぎやすくなるのでおすすめだ。吸湿マットも定期的に天日干しすることを忘れないようにしたい。
扇風機や乾燥機 効果的に活用を
汗は掛け布団も湿らせる。朝起きたらとりあえず上掛けの布団をはいで空気にあて、水分を飛ばすといいだろう。可能であれば、イスなどに掛けてサーキュレーターや扇風機で風をあてる。天日に干せなくても、空気にさらすだけでも違ってくる。
子供が寝る2段ベッドでは、上段の掛け布団が盲点になりやすい。高いところは風通しがいいと思い込みがちで、目も届きにくい。だが、板などで周りを囲まれ、湿気が逃げにくい構造となっているベッドは多く、掛け布団のカバーの縁にカビが生える例が目立った。定期的に点検するといいだろう。
布団乾燥機はカビ防止に効果的だ。掛け布団と敷布団の間に風を送り、湿気を飛ばす。敷布団の下に差し込むこともでき、布団全体がさっぱりする。日中家にいられない場合や雨などがつづくとき、価格以上の働きをしてくれる。時間に制約がある家庭にはおすすめしたい。
肌に直接触れるシーツや枕カバーなどについては、できるだけ頻繁に洗濯し、乾燥させたい。シーツ交換の際、敷布団やマットレスを動かすことも、寝具全体の乾燥を促す面がある。
すでにカビが生えてしまった寝具についてはどうか。外せるカバーや洗濯可能なパッドなどは塩素系漂白剤に漬け込むなどし、殺菌・漂白する。十分すすいで洗った後、完全に乾燥させれば、もとの状態を取り戻せる場合がある。
ただ、一般的に、丸洗いできない布団の再生は難しい。羽毛や羊毛、綿などどの素材でもそうだが、カビは見えない部分にも深く広く菌糸をのばしている。
カビが広範囲に広がってしまった寝具は、布団1枚につき最低でも5000円程度かかるクリーニング代と勘案してみてはいかがだろう。比較したうえで、廃棄も検討することをおすすめしたい。
寝室の換気は毎日、掃除も週に一度以上を目安にすることが必要だ。気づいたら布団も何もかもカビだらけ、という状態にしないためには、寝具は毎日湿るという認識とお手入れの習慣を持ちたい。
(住生活ジャーナリスト 藤原 千秋)
[NIKKEIプラス1 2020年6月20日付]
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