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コロナ危機の影響によって、米国と中国の対立は激しさを増している イラスト・よしおか じゅんいち

米中は覇権競争を繰り広げている、と世界中が気付きはじめた。競争から戦争へのリスクが高まるのか、武力衝突に至らない緊張状態が続くのか、米中共同覇権を構築するのか、それとも米国を差し置いて中国が21世紀の覇権国家になるのか――世界に突き付けられた課題だ。

中国は世界第2位の経済大国に駆け上がり、その経済力を武器に政治・外交・軍事・海洋・宇宙・文化・サイバー空間など、あらゆる分野で発言権や存在感を増している。それだけではない。中国は巧妙にも国際機関に人材を送り込んで、組織内部から国際機関を動かす政治力も身につけ始めている。

広がる中国模式

コロナ危機の震源地であるにもかかわらず、中国はどのような分野であれ、世界からの対中批判は受け付けないとの立場だ。「中国の夢」を追い求める習近平国家主席は「中華民族の偉大な復興」を人民に熱く語り、自信とプライドを植え付ける。共産党の独裁政治と市場経済を矛盾なく受け入れる「中国の特色ある社会主義」も、チャイナ・スタンダード(中国模式)だ。あらゆる分野で中国模式が登場する可能性がある。

米中関係を「トゥキディデスの罠(わな)」と表現したのが、ハーバード大学教授のグレアム・アリソン著『米中戦争前夜』(藤原朝子訳、ダイヤモンド社・2017年)である。この「罠」とは「新しい勢力が既存のトップの地位を脅かすときに生じる、自然かつ避けられない混乱」を意味する。古代ギリシャの歴史家トゥキディデスは、新興の都市国家アテネが当時の支配勢力であったスパルタに挑戦し、ペロポネソス戦争に至る過程を戦史にまとめた。この史実を踏まえて、米中関係には戦争のリスクがあり、両国に存在する「構造的ストレス」を解消することこそが、戦争回避への道だと著者は説く。

かつて「パンダハガー(親中派)」であった元米中央情報局(CIA)職員マイケル・ピルズベリーが自省の念に駆られつつ、米国の対中政策が根本的に誤っていたことを告白したのが、『China 2049』(野中香方子訳、日経BP・15年)である。米国が中国に支援の手を差し伸べ、中国経済を活性化させることが米国の利益になると固く信じてきたが、逆に米国は中国に利用され続け、制御不能な中国を作り出してしまったと、米中関係史を振り返る。著者は反中強硬派へと転向した。

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