ビッグマックセット宅配1100円 シンガポール再開
シンガポール人はマクドナルドが好きだ。国内各地のショッピングモールはもちろん、住宅地にも広く浸透している。だから4月半ば、複数の店舗の店員計7人が新型コロナウイルスに感染したのを受け、全135店が自主休業を決めたときの衝撃は大きかった。
3週間の休業を経て、いよいよ再開した5月11日。「神様ありがとう」。母親が買ってきてくれたマックのチキンナゲットをいとおしげに抱え、泣きじゃくりつつほお張る9歳のシンガポール人少年アダム君の映像が、SNS(交流サイト)で国中に広まった。アダム君は4月に休業を知らされた時、涙ながらに「お母さんの作るポテトじゃいやなんだ」と訴えていた。
外食好きのシンガポーリアンにとってマックは子供のころから家族で通ったり、放課後に友達と宿題をしたりと、思い出の多い場所だ。コロナ禍の休業を経て、マクドナルド・シンガポールが再開をフェイスブックへの投稿で発表すると、「マック・ロス」に陥っていた人々の「生まれて初めてマックのない生活を経験した」「お帰り!」といった歓迎のコメントであふれた。
ただ感染防止対策で、同国の飲食店は店内での飲食禁止が続いている。許されるのは持ち帰りと宅配だけだ。再開後、大多数のマックファンたちは感染リスクの低い宅配を選んだ。
再開当日、多くの店では行列は見られなかったが、宅配では注文があふれ、アクセスできないケースもあったようだ。「一部の顧客には自動的にアプリ上の待合室で待ってもらった」と同社は釈明した。
同社が宅配を始めた2005年当時は「高くつく」と敬遠する向きも多かった。今や注文金額に下限がない「グラブフード」などの宅配サービスで、1人分の食事をオーダーする人も珍しくない。
ビッグマックのセットは宅配で14シンガポールドル(約1100円)と、店頭の約7.65シンガポールドルの倍近い。4シンガポールドル超の宅配料・手数料だけでなく、メニューの価格設定もビッグマックでは店頭より約13%高いからだ。それでも宅配の便利さに味をしめた消費者は多いようだ。
(シンガポール=谷繭子)
[日経MJ 2020年6月14日付]
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