卵かけご飯もっとおいしく 大葉・とろろ加えサッパリ
卵を割るだけで手軽に食べられる卵かけご飯。いたってシンプルな料理だが、混ぜ方や調味料を工夫すれば楽しみが広がる。おいしい食べ方を探った。
卵は世界中で手に入る食材だ。だが、生で食べられる国は珍しい。卵かけご飯は卵の安全性が高い日本だからこそ味わえるごちそうだ。
王道はご飯に全卵としょうゆをかけて混ぜる食べ方だろう。日本たまごかけごはん研究所(神奈川県鎌倉市)代表理事でシェフの上野貴史さんは、「黄身と白身を分けたり、凍らせたり。卵の加え方を変えるだけで何通りもの味を楽しめる」と話す。
上野さんがおすすめする基本はご飯にしょうゆを混ぜた後、溶き卵をかけて食べる方法。口の中に卵の味が広がった後、しょうゆの塩味とコクを感じられる。しょうゆが控えに回り、卵が全面に出る。ポイントは、少しかために炊いたご飯を使うこと。卵白としょうゆの水分が混ざり合っても、米の食感と味がしっかり残る。
上野さんによると、ご飯軽く1膳(150g)にしょうゆ7g、Mサイズの卵(60g)の組み合わせが黄金比だ。しょうゆは、色が淡い薄口が向く。シジミやカキなど、貝類のダシじょうゆとも相性がいい。
300種類以上のしょうゆを試して開発した協会の公式しょうゆは、薄口しょうゆにステビアなどのハーブの甘さを加えた。自宅でつくるなら「めんつゆをミネラルウオーターで薄め、薄口を足し合わせた調味料の味が近い」(上野さん)。
白身泡立て 上に黄身
最近は「TKG」と略され、さまざまなアレンジ法が話題を呼んでいる。SNS(交流サイト)を中心に広まっているのが、白身をメレンゲ状に泡立て、その上に黄身をのせたもの。見た目も美しく、白身のふわふわとした食感を楽しめる。先に白身とご飯を混ぜ、後から黄身をのせても似たような味になる。
上野さんはしょうゆと凍った黄身のみのせることもある。卵を殻ごと一晩冷凍し、2時間ほど自然解凍して割ると、黄身と白身は簡単に分けられる。黄身は箸で持てるほどもっちりした弾力が生まれ、いつもと違った味わいだ。
卵には合わない食材がないといわれ、卵かけご飯と相性のいい食材も幅広い。暑くなる季節には、大葉やとろろを加えるとよりさっぱり食べられる。黒コショウやワサビなど身近な調味料や、岩のりなどを少し足すだけで味わいががらっと変わることがある。
卵はコレステロールを多く含むことから、かつては「1日1個まで」といわれていた。だが、その後の研究で、医師から摂取制限するよういわれていない人は特に気にしなくてもいいとわかった。
JA全農たまご(東京・新宿)の管理栄養士、辻井朋香さんは「栄養価が高い卵は、他の食品と組み合わせながら1日2~3個食べてほしい」と話す。卵かけご飯にすると、卵が米を覆うため血糖値の上昇が緩やかになり、太りにくくなるメリットもある。卵料理研究家の友加里さんは「白米の代わりに食物繊維を豊富に含む玄米やもち麦を使うのもおすすめ」という。
「賞味期限内であれば、鮮度にこだわる必要はない」と友加里さん。日本の卵には等級がつけられていた時代があった。卵かけご飯に合う卵「とくたま」を7年かけて開発したJA全農たまごの川口真平さんによると、「今はすべて特級レベル」という。
パックごと 卵を保管
鶏のエサや水の管理でちょっとした違いは出る。栄養成分や口当たりのねっとり感などを調整したり、黄身の色を変えて視覚的なおいしさを引き出したりしている。
よりおいしく卵かけご飯を味わうには、卵の扱いも大事だ。割るときは、衝撃を与えないようそっとご飯に割り入れるのがコツ。「上から落とすと黄身の中に詰まった粒が壊れ、食味が変化する」と川口さんは指摘する。
卵の殻には1万6千個前後の気孔がある。においを吸収しやすいうえ、水滴がつくと細菌が繁殖することもある。友加里さんがおすすめする保管法はパックごと冷蔵庫にしまうこと。「温度変化が激しいドアポケットには置かないこと」もポイントだという。
ちょっとした工夫で味わい方が無限に広がる卵かけご飯。お気に入りの食べ方を見つけてみてはいかがだろうか。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2020年6月13日付]
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