工業地帯に根付いたウチナーの味 川崎の沖縄料理

「びんがた」のオリジナル料理「タコスヒラヤーチー」
「びんがた」のオリジナル料理「タコスヒラヤーチー」

京浜工業地帯の中心である川崎市には多くの沖縄出身者とその家族が暮らす。大正時代に紡績工場で働いた工員らが仕事を求めて移り住み、1924年にはいち早く川崎沖縄県人会が発足した。市内には沖縄出身者が腕を振るう郷土料理店が多い。代々受け継がれてきた味だけでなく、新たに考案した料理もメニューにのる。新型コロナウイルスの影響で、今回紹介する各店は現在、時間短縮で営業している。

平良京子さんが調理場を仕切る「びんがた」。店内では消毒や換気を徹底している。「ゴーヤーチャンプルー」などの定番料理のほか、「ヤギの刺し身」も人気が高い。「ゴーヤーも歯応え、味の濃さが内地産とは違う」(平良さん)ため、大半の食材を沖縄から空輸している。

平良さんのオリジナルは2つの沖縄料理を組み合わせた「タコスヒラヤーチー」だ。薄い生地のお好み焼き「ヒラヤーチー」の上に、ひき肉やチーズ、野菜を合わせた「タコライス」の具材のみをのせる。「コメよりも小麦粉の方が具材との相性が良いと思った」(同)のがきっかけだ。一見すると、ピザのようだが、生地はモチッとした食感で、ひき肉に溶けたチーズが絶妙に絡み合う。レタスやトマトもたっぷりで、サラダ感覚で味わえる。

「南風原そば」が「ゆんたく」の名物だ

「ゆんたく」は代表の仲宗根真一さんが出身地にちなんで命名した「南風原(はえばる)そば」が名物だ。ひき肉や長ネギ、ニンジン、ニンニクをゴマ油で炒め、溶き卵を加えた汁そばで、「沖縄料理になじみのない人にも受け入れられるように考えた」(仲宗根さん)という。

川崎市に隣接する横浜市鶴見区にも沖縄からの移住者が多い。1955年の創業で、自家製麺の「沖縄そば」を提供するのが「うちなーすばヤージグワー」だ。祖母から店を引き継いだ雪山秀人さんが試行錯誤を重ね、さば節、かつお節、豚骨、鶏ガラなどをブレンドし、「沖縄そばの特徴を残しつつ、ラーメンのような風味のある新しいスープ」(雪山さん)を作り出した。

「ゆんたく」では沖縄芸能のライブも開いている(現在は休止中)

スープを飲むと、さっぱりとした中にも深みのある味わいが口の中に広がった。ソーキ(豚のスペアリブ)や豚の三枚肉、テビチ(豚足)などがトッピングできるので、1杯のそばで様々な沖縄料理を堪能できる。ソーキも三枚肉も「幼い頃から親しんだ祖母の味つけ」(同)で、軟らかくほぐれ、麺やスープとの相性も良い。

川崎や鶴見には多くの人の舌になじむ沖縄料理がしっかりと根を下ろしている。

<マメ知識>沖縄芸能ライブも
川崎市は沖縄出身者による民俗芸能が盛んで、神奈川県の無形文化財にも指定されている。「ゆんたく」では毎晩、三線(さんしん)などの楽器を演奏するライブを開いている。ただ、現在はコロナ禍で休止中だ。市内では沖縄の文化に焦点を当て、屋台や物販、伝統芸能のイベントで盛り上がる「はいさいFESTA」も開催している。毎年ゴールデンウイーク(GW)に開いているが、17回目となる今年は9月に延期して開催する予定だ。横浜市鶴見区でも11月に「ウチナー祭」を開いている。

(川崎支局長 名波彰人)

[日本経済新聞夕刊2020年6月4日付]

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