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「クトゥルフ神話」 神々の幻想世界、ポップに進化

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NIKKEI STYLE

米国の怪奇小説家H・P・ラヴクラフトの作品群で描かれた「クトゥルフ神話」のファンが増えている。重厚な小説の世界観が漫画やライトノベル、アニメなどへ派生し、ポップに進化中だ。

大衆小説の作家だったラヴクラフト(1890~1937年)は重厚な文体で、謎と矛盾に満ちた幻想的な物語を発表。太古に地球を支配したという邪神と人間の遭遇を描き、神々の名や設定を作家仲間と積極的に共有した。死後、仲間のダーレスらが「クトゥルフ神話」として体系化した。

「ファンタジーの要素が強く、ハードボイルドでもある。クトゥルフ神話のエンターテインメント性は、漫画と相性がいい」。2004年からラヴクラフトの小説を漫画化してきた田辺剛氏はそう語る。

今年、「時を超える影」(KADOKAWA)が、フランスのアングレーム国際漫画祭で連続作品賞を受賞した。選評では「息が詰まるほどリアリスティックな黒い描線で、言葉にしがたいものを描いている」と称賛。田辺氏の密度の濃い描写が抽象性の高い原作の世界へ読者を誘い、没入感を高めていく。

不可解さが生む恐怖という原作の魅力を、今の読者にどう伝えるか。漫画は原作に忠実だが、理解を助ける工夫がしてある。例えば「クトゥルフの呼び声」(同)で、亡くなった大伯父の研究に主人公(語り手)が傾倒していくくだり。「主人公の動機を説明するため、大伯父と2人で仲良く写った写真の絵を入れた」。その一コマで感情がすっとつながり、読者はスムーズに理解できる。

KADOKAWAが3月に刊行した4点の「クトゥルフ神話~ラヴクラフト傑作選」はオールカラーで描かれたアメコミの邦訳。田辺氏の漫画同様、小説を読んだことのない人も気軽に楽しめる。同社の工藤裕一氏は「原作は腰が引けるが、コミックならというライトなファン向け」という。

邪神を愛らしく

原作ではまがまがしい姿の邪神をゆるキャラのように愛らしくデフォルメしたのは、解説書「クトゥルフ様がめっちゃ雑に教えてくれるクトゥルフ神話用語辞典」(新紀元社)。著者はイラストレーターの海野なまこ氏だ。学生だった13年、クトゥルフ神話を題材にしたTRPG(会話型のアナログゲーム)にはまり、原作にのめり込んだ。

ところが、ゲーム仲間は小説を読まない。「邪神の魅力を若い人にも知ってもらいたい。そのきっかけになれば」と刊行した。「ゆるるふ神話シリーズ」として辞典のキャラクターを使ったグッズも発売中だ。

「クトゥルー神話大事典」著者で、アンソロジストの東雅夫氏は「ラヴクラフトはキリスト教以前の神話への憧れや(当時の米国東部の)ピューリタン社会への違和感を感じていたはずだが、日本人にその感覚はない」と指摘。一方で「邪神に魔道書と、二次創作意欲をそそる要素が多い。作家自身も作品がシェアされることを望んでいた」と現代的なサブカルチャーとの親和性が高いとみる。

混迷の現代と呼応

クトゥルフ神話からのぞく「オタク志向」が、ゲームなどから入ったファンの琴線に触れ、怪奇・SF小説ファンとは違う新しい支持層を形成。今や文芸の枠を超え、アニメやゲーム、フィギュアといった様々なカルチャーに作品世界が取り込まれている。邪神「ニャルラトホテプ」が美少女になったライトノベル「這(は)いよれ! ニャル子さん」(09年刊行、12年テレビアニメ化)のヒットは、その最たる例だろう。

新たなファンを意識した小説の新訳も出た。19年に南條竹則氏が編訳した「インスマスの影」(新潮文庫)は「ラヴクラフトを読んだことのない若い人に向けて分かりやすい言葉遣いを意識した」(南條氏)というラヴクラフトの短編集だ。原作の趣を保ちつつ、文体を読みやすくしている。

「黙示録的で、人の意識の深層レベルまで届く今日的なものがラヴクラフトの作品にはある」と南條氏。名状し難い混迷の現代社会と、太古のクトゥルフ神話は遠く呼び合っているのかもしれない。

(桂星子)

[日本経済新聞夕刊2020年6月1日付]

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