カフェでソーシャルディスタンス 私語厳禁1人楽しむ
新型コロナウイルスの感染予防をテーマにしたカフェが5月中旬、東京都内にオープンした。テーブルを一定間隔に離して配置するほか、客同士の濃厚接触を防ぐためのルールを設定。感染リスクを高める「三密」を回避する取り組みを徹底している。新型コロナが完全に収束しないなかでも安心してカフェを利用したいという消費者のニーズを取り込む狙いだ。
JR池袋駅東口から徒歩1分。多くの飲食店が集まる繁華街に「ソーシャルディスタンシングカフェ東京」がある。店内に入ると「5つのプロミス」と書かれた張り紙が目に入る。
「マスクの着用必須」、「複数での入店は禁止」など感染予防に向けたルールを定め、従業員が口頭でも来店客に伝えるのがこの店の決まりとなっている。
私語は禁止で、ひとりの時間を安心して楽しんでもらうのがコンセプトだ。広さ約180平方メートルの店内にある客席は20席程度。前後約2メートルの間隔をあけて配置し、椅子を同じ方角に向けて据えている。防音壁の囲まれたビデオ会議専用の個室も完備している。
営業時間は午前10時から午後8時までで、利用料は1時間500円、1日で2000円。アイスコーヒーや紅茶など6種類の飲料をそろえている。パソコンや携帯の充電用コンセントも備え、仕事の合間の休憩やテレワークなどで利用する会社員などの需要を見込んでいる。
同店を初めて訪れた飲食店経営の男性(37)は「自宅近くのカフェはどこも休業中。仕事ができる場所を探していたので助かった」と話す。
運営するのはイベント企画を手がける「ジャパン イケメン プロジェクト」(東京・豊島)。もともとはアニメや小説をテーマにしたカフェを期間限定で開いていたが、コロナの感染が本格化した3月下旬から休業状態。4月~6月に予定していたイベントの開催のめども立たない状況となっている。
店内では声優のトークショーも頻繁に催し、多いときには150人以上が参加していた。「ライブハウスのように人が密集してしまい、営業継続は難しかった」(堀川修社長)
ただ、何もしなければ収入はゼロのまま。安心・安全をアピールしつつ営業を続ける方法を考えるなかで、ソーシャルディスタンシングカフェを思いついた。
政府の緊急事態宣言の解除に伴い、スターバックスコーヒージャパンなどの大手カフェチェーンも徐々に営業を再開している。ただ、一度離れた客足が戻るには時間がかかりそうだ。堀川社長は「新型コロナ対策にどれだけ取り組んでいるかが今後の来店の判断基準になる」とみる。
ソーシャルディスタンシングカフェは今後2~3カ月は営業を続ける方針だ。長期の在宅勤務に疲れ、ほっと一息つきたい人は試しに一度訪れてみてもよいかもしれない。
(井上航介)
[日経MJ 2020年5月27日付]
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