カジダン医師への道 家族の絆、オンラインで強く
川崎市立川崎病院医師 田中希宇人氏
新型コロナウイルス対策による在宅勤務によって、仕事をしながらも家族と過ごす時間を充実させている人は多いのではないでしょうか。やがて、勤務が通常モードに戻ったとき、家族と濃密にかかわった分、その時間が減ることの反動がこないようにしたいものです。コロナ対策で様々なところでオンライン活動が浸透しましたが、家族とのつながり感を保つことにも役立ちそうです。
子供の習いごとや勉強に父親が日々、深くかかわっていくことも、家事・子育ての一つと考えています。我が家では、コロナ禍の前から幼稚園に通う6歳の長女に、教育サービス会社のタブレット教材を使わせていました。端末を通じて読み書きや計算をゲーム仕立てで学んでいくもので、頑張った分だけ画面上にあるキャラクターが成長していきます。子供が楽しみながら勉強する横で、親は安心して家事など家のことができる利点があります。そのなかで、私にとって一番役立っているのは、タブレット教材についているメール機能です。
「きょうはおひるごはんに◎◎をたべたよ」「ままのおてつだいをちゃんとしているよ」。こうしたメールが長女から、日中、病院で仕事をしている私に届きます。外来でみる患者さんがすべて帰られた後や、病棟勤務など1日の仕事を終えて帰路につくときに目を通します。
帰宅が遅くなり、子供たちと一緒に過ごす時間が限られた場合でも、メールの内容を接ぎ穂に、ポンポンと会話が弾み、全開で濃密なコミュニケーションがとれます。「今日は何していたの」から始めたらなかなかできないことです。長女も、日中にメールを送るだけでも父親とつながっていると感じて楽しんでいるようです。
コロナ禍によって、対面しなくても意思伝達ができるオンラインが日常のなかに一気に浸透してきました。私が勤務する病院では、再診で容体が安定している患者さんには電話連絡だけで、処方箋を出して次回の診療予約を済ますことができるようになりました。画像を通じたオンライン診療まではいかないものの、患者さんも医師も、時間をとても効率的に使えるようになっています。
現状では、オンラインに課題もあります。診療であれば、対面してこそ気づくこともあります。教育なら、オンライン授業でも教室と同じように、教えたいことがしっかり伝わるように先生方も苦労されています。
重要なのはオンラインによって生み出される時間を、どう実りあるものにつなげていくかと感じています。コロナ禍で大変な日々が続きますが、明日につながるものを見つけていきたいです。
39歳。2005年慶應義塾大学医学部卒業、13年川崎市立川崎病院勤務。日本呼吸器学会呼吸器専門医など。ブログ「肺癌勉強会」やTwitter(@cutetanaka)で最新情報を発信中。
[日本経済新聞夕刊2020年5月26日付]
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