果実酢を作って梅雨撃退 爽やか酸味、紅茶にも合う
これからの蒸し暑い季節に、さっぱりした果実酢を作ってみてはいかがだろう。最近は「飲むお酢」としてさまざまな果実酢が売られているが、自家製なら果物の種類や甘さ調節も自在だ。
果実酢は果物の風味を楽しめる酢。水や炭酸で割って飲んだり、酢の物などの料理に使ったりと、その用途は幅広い。
酸味の強い酢は単体ではなかなか食生活に取り入れにくい。だが、管理栄養士で料理研究家のひろのさおりさんは「やわらかな酸味の果実酢なら使いやすい」と話す。
果物は冷凍品も 氷砂糖がお薦め
作り方は簡単だ。用意するのは果物のほか、酢と砂糖、保存容器など。果物は旬のものはもちろん、冷凍品やドライフルーツも使える。
穀物酢やリンゴ酢など、爽やかな酸味の酢が果物と相性がいい。砂糖は氷砂糖を選ぶと作りやすい。酢のなかの糖度が高まると、浸透圧で果物からエキスが溶け出してくる。「氷砂糖は溶けるスピードが緩やかなので、果物のエキスもゆっくり引き出されておいしくなる」(ひろのさん)。上白糖も使えるが、容器の底に沈んでしまう。その場合は1日1回くらいかき混ぜるといい。
容器は煮沸消毒できるガラスやホーロー製がおすすめだ。ポリプロピレンやポリエチレンでもいい。酢で溶けてしまう場合があるので、金属製のふたの容器は避けよう。煮沸するときは、いきなり熱湯に入れないこと。沸騰して5分ほどしたら、トングなどで清潔なふきんの上に取り出し乾かすのがポイントだ。
果物と酢、砂糖はどんなバランスがいいのか。ひろのさんは「重さの比率は1対1対1が標準」と話す。甘さ控えめで酸味を出したい人には「2対3対1.5がおすすめ」という。
果物は液にすべて漬かるように入れたい。イチゴやブルーベリーなど小さい果物はそのままの大きさで、オレンジなど大きめのものは輪切りやザク切りにする。ただ、小さく切り過ぎると果肉が崩れてしまう。大きすぎても酢に漬からない部分が出るため、切り方には注意しよう。
異なる果物の配合や、ハーブ、紅茶などを加えて漬け込むのもありだ。ミツカン・メニューコミュニケーション課の前田理紗さんのおすすめはオレンジと紅茶のティーバッグの組み合わせ。「グレープフルーツにショウガと赤唐辛子を合わせたり、バナナと黒酢、黒糖などを組み合わせたりしてもおいしい」と話す。
果肉は取り出し ジャム作る手も
氷砂糖が溶けるまでの1~2週間は冷暗所で保存する。砂糖が溶けたら果物を取り出し、冷蔵庫に保管する。1年程度保存できるが、香りが爽やかなままの最初の3カ月で使い切るのがおすすめだ。
取り出した果肉は早めに使おう。かなり酸っぱいが、果実酢を薄めた飲み物に浮かべたり、刻んでヨーグルトに混ぜたりしてもいい。砂糖を加え、電子レンジで加熱してジャムにする使い道もある。
出来上がった果実酢の活用法で最も一般的なのは、水割りやソーダ割りだ。5倍程度に薄めるとのどごしもすっきりの飲み物になる。牛乳や豆乳で割ってもおいしい。甘さ控えめの果実酢なら、市販のジュースに比べて低カロリーな飲み物になる。「果物の香りを感じられると、甘みが強くなくても十分な満足感が得られる」とひろのさんは話す。
さらに紅茶に加える楽しみ方もある。「スプーン1~2杯の果実酢でフルーティーな香りが広がる。かんきつやベリー系、りんごの果実酢が紅茶に合う」(ひろのさん)
酢が健康によいことは広く知られている。毎日大さじ1杯(約15ml)の食酢を継続的に摂取することで、肥満ぎみの人の内臓脂肪の減少や、高血圧、血糖値上昇の緩和などにつながるという。「果実酢の原液に換算すると、だいたい大さじ2杯半を飲めば食酢15mlを摂取したことになる」(前田さん)
料理にもどんどん使いたい。オリーブ油や塩と混ぜ合わせれば、果物の香りが生きたドレッシングになる。しょうゆと合わせたタレは酢のものにぴったりだ。甘酢あんかけや酢豚、魚介のマリネなどを作るときの調味料としても活用できる。かんきつ系の果実酢はニンジンを千切りにしたサラダ、ラペに最適だ。
おいしく健康的な果実酢を手作りすれば、じめじめとした梅雨時でも体と気分がすっきりしそうだ。
(ライター 土井 ゆう子)
[NIKKEIプラス1 2020年5月23日付]
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