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貿易立国の一翼を担ってきた丸紅

貿易立国の一翼を担ってきた丸紅

■総合商社で随一の電力部門を抱える丸紅。柿木真澄社長は電力部門に長く携わった。

電力部門に配属されて以来、中東地域を長く担当しました。1991年にエジプト・カイロ駐在から本社に戻ってからも中東を担当しましたが、当時の主力はアジアで、中東はほぼ未開拓。当初は先輩方から引き継いだ案件を粛々と管理する仕事が続きました。

翌92年、大きなチャンスが舞い込みました。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに建設する大規模火力発電所に、ガスタービン12台を納入するEPC(設計・調達・建設)契約を結べたのです。私にとって初めてゼロから手掛ける大型案件。ただその時は課長代理、課長と昇進後もつきっきりになる案件になるとは思いもしませんでした。

■現地工事を担当するアイルランドの会社が倒産してしまう。
かきのき・ますみ 80年(昭55年)東大法卒、丸紅入社。10年執行役員、13年常務執行役員。19年から現職。鹿児島県出身。

かきのき・ますみ 80年(昭55年)東大法卒、丸紅入社。10年執行役員、13年常務執行役員。19年から現職。鹿児島県出身。

納期は93年で1年で終わるはずでした。ところが完成した発電所を引き渡したのは97年と、長い歳月を要しました。何が起こったのか。現地で工事を発注したアイルランドの会社が倒産したのです。その会社は数多くの下請け会社も抱えていました。急きょ当社が下請けへの対応も含めて取りまとめることになりました。当然、工事は遅れます。

折しも92年はバルセロナ五輪が開催された年でもあります。倒産した会社は、アブダビの案件で得たお金を五輪関連の電気工事に回しており、ほとんど資金が残っていませんでした。先方の社長が滞在するホテルに押しかけ、「自分のクラシックカーでも売って少しでも返そうとは思わないのか」と詰め寄ったこともありましたが、向こうは「ビジネスとプライベートは別」と悪びれず。なんでこんな目に遭うのかと悔しい思いをしました。

■投げ出さずに続けたことが好評価を生む。

顧客のアブダビ電力庁は当時の湾岸諸国でも最も厳しい顧客の一つといわれていました。発電所の試運転期間中に実施する性能試験になかなか合格を出してくれず、引き渡しはさらに遅れました。

ただ、発電所を完成させ、夏季の電力供給に貢献したことは評価してくれました。試運転期間が長かったものの、発電所の設備そのものは出来上がっていたため、完工証明の日付を当初の納期通りにしてくれました。他社が手掛けるアブダビの大型プロジェクトは軒並み完成が何年も遅れていたのですが、その中で丸紅が手掛けた案件は納期を守っているという評判が業界で立ちました。

そこから次のEPC案件を受注するなど好循環が生まれました。当時は次につなげなければ大損しか残らないと必死でしたが、結果として途中で投げ出さなかったことが信用につながったのです。

あのころ……

総合商社による電力ビジネスは、日本製の発電機などを輸出したことから始まる。丸紅は90年代、中東地域にいち早く参入したが、その後は他の商社の参入も相次ぎ、海外勢も交えた激しい受注競争が始まった。

[日本経済新聞朝刊 2020年5月12日付]

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