オンライン会議に疲労感 コロナで見直す対面の合理性甲南大学教授 阿部真大

私自身、勤務先の大学の要請でテレワークをはじめて気づいたことは、リアルな対面コミュニケーションのもつ情報量の豊かさと効率性である。今までリモートでも同じだと思っていた会議を実際にリモートでした時のコミュニケーションの困難さは、現在、多くの人が経験していることだろう。

それは、社会学者が対面的相互行為のメカニズムとして、長年追究してきたテーマでもある。アーヴィング・ゴフマンは、人々の相互行為を舞台における「パフォーマンス」にみたて、空間の使い方、身振りの仕方、相手との距離の取り方なども含めた、人々の複雑な「印象操作」や「自己呈示(ていじ)」のあり方について明らかにした。ゴフマンの理論に興味のある方は『触発するゴフマン』(中河伸俊・渡辺克典編、新曜社、15年)をお読みいただきたい。

組み合わせ焦点

ゴフマンの議論で示されるような相互行為をオンライン・コミュニケーションで実現するのは、現状では極めて困難である。だからこそ、人々はテレワークにおけるコミュニケーションに、新しい種類の「疲れ」を感じはじめているのだろう。

今回のコロナ危機は、リアルな対面コミュニケーションの意義を人々に再認識させる機会、つまり、「古い働き方」の良い部分を人々が見直す機会ともなっているのである。

働き方が新しいか古いかだけではなく、対面かリモートかというふたつの働き方のどういった組み合わせが最も合理的なのか。コロナ危機を経た日本においては、働き方をめぐる議論のより一層の深化を期待したい。

[日本経済新聞朝刊 2020年5月9日付]

モバイルメディア時代の働き方: 拡散するオフィス、集うノマドワーカー

著者 : 松下 慶太
出版 : 勁草書房
価格 : 2970円 (税込み)

触発するゴフマン―やりとりの秩序の社会学

編集 : 中河伸俊、渡辺克典
出版 : 新曜社
価格 : 3080円 (税込み)

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