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コース料理の宅配とピザの通販 イタリアン名店の挑戦

日経MJ

奥田シェフも自ら料理を宅配する
奥田シェフも自ら料理を宅配する

「新型コロナウイルスの打撃は深刻。このままだと日本の飲食店の4割は閉店・廃業しそうです」。そう話すのはレストランで地域活性を実現してきたイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」(山形県鶴岡市)の奥田政行オーナーシェフだ。

いわゆる地産地消型レストラン経営の第一人者で、レストラングループ「オール・ケッチァーノ」の代表でもある。日本各地に直営店を4店舗、プロデュース店を5店舗展開する。新型コロナが感染拡大する前まで、どの店も地域の1次産業と直結したレストランとして繁盛していた。

その奥田シェフのグループにもピンチが訪れた。営業自粛の余波で、売り上げはどの店も約90%近くダウン。直営店の固定費だけでも月に1000万円を超えるという。

問題はそれだけでは無い。奥田シェフは自身が応援している生産者から直接食材を仕入れている。客足が落ちると、そうした生産物の仕入れが出来なくなり、生産者の生活が成り立たなくなってしまう。

こうした状況を打開すべく、奥田シェフが打ち出したのが「東京ゴーストアルケッチァーノ宅配便~日本の畑と海を繋(つな)げる大作戦~」だ。ひとつは東京でのコース料理の宅配事業。もうひとつは冷凍ピザなどの通販だ。

いま宅配や通販に力を入れる飲食店は多いが、奥田シェフは視点を変えて取り組んだ。宅配のコース料理は社員食堂やこだわりのスーパーで弁当販売をしているオーガニック・キッチン(東京都中野)に製造を依頼した。「食の安心、安全を考えると衛生管理されたキッチンと、知識のあるスタッフは欠かせません。そのため専門業者との共同事業としました」と奥田シェフは語る。

宅配するコースの盛り付け例

宅配にはオーガニック・キッチンの保冷車3台を使って、スタッフと一緒に、奥田シェフ自身も宅配する。配達エリアは千代田や中央など10区限定。コース仕立てで、前菜はカリフラワーを使ったソースの「アルケのバーニャカウダ」や「クヌギ鱒のマリネ」などで、パスタとメイン料理が付く。日替わりで内容が変わり、価格は1人前4000円で、2人前から注文出来る。配達手数料は一律2000円。1日に40~60食の注文がある。

通販は冷凍のみで、マルズワイガニがふんだんにのったピザ4枚とラザニア2個がセットで、送料込み8000円。SNS(交流サイト)で告知したところ、初日だけで150セットを販売した。

ピザセットの製造は食品衛生管理の国際基準「危険度分析による衛生管理(HACCP)」に対応した工場を運営しているステラフーズ(福島県白河市)が引き受けた。

現在はピザセットの注文はSNSのみだが、宅配のコースは、オーガニック・キッチンのサイトから注文出来る。「コロナ禍は1年以上、影響が残ると思いますが、それに負けない戦略作りをして生き残らないといけない」と奥田シェフは語る。

すでに5月。これから日増しに気温は上がり、食中毒の心配も増える。店頭での弁当販売やテークアウトで活路を切り開いた飲食店にとって悩みが増す季節だ。そうしたリスクを奥田シェフのように回避するのも一案。次の一手の参考になりそうだ。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2020年5月8日付]

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