だし×ワインが魅力、宅配も 川に浮かぶ食堂・大阪市
京セラドーム大阪(大阪市)の近くに1月、川の上に浮かぶ複合商業施設「タグボート大正」が開業した。飲食店テナントの中で目を引くのが、だしとワインをペアで味わえる「アトリエスタ食堂」だ。だしを使った料理と一緒にワインを味わうと、それぞれのうまみがお互いを引き立てあうという。大阪を中心に地元の野菜にこだわり、おでんやカレーなどのメニューをそろえる。
タグボート大正は、飲食店運営のリタウン(大阪市)が手掛ける。大阪市大正区の新しい観光スポットを目指し、第1期として1月にフードエリアがオープン。船上レストランや沖縄料理店など16店が入る。今後はワークショップなどの設置も予定する。
アトリエスタ食堂は、アートの観点からPRやイベント開催をするアンドハコ.ラボラトリー(東大阪市)が運営する。同社が飲食店を開くのは3店舗目。地場農家もPRし支援する同社の活動に、リタウンの松本篤社長が共感し、タグボート大正での出店が実現した。おでん3品とワインセットで1000円(税込み)。水辺の景色が楽しめるフードコートで開放的な気分に浸りながら味わえる。
「2年ほど前から、だしとワインを組み合わせたら面白いと考えていた」と語るのは、アンドハコ社の片岡伸治副代表取締役。和食のイメージが強いだしと、ワインはミスマッチな組み合わせに思われる。だが、ワインには果実のうまみがあり、だしとマッチするという。
だしは大阪らしい味を意識し、甘さにこだわった。北海道の羅臼昆布と、高知県のソウダガツオを合わせだしにして、しょうゆと砂糖を加えた。コクを出すために、隠し味としてオイスターソースを使った。
野菜にもこだわる。だし唐揚げには、泉佐野市の射手矢農園生産のキャベツを添える。アンドハコ社は、大阪にある農園の収穫を手伝い、その様子を写真共有アプリ「インスタグラム」で配信するなど応援している。「農家が土作りから丁寧にやっていて、普通のキャベツや水ナスより甘さを感じる。農家から直接仕入れているので、新鮮なまま提供できる」(片岡氏)
その斬新なコンセプトが好評で「月200万円いけば良いと思っていた」(片岡氏)という想定を上回り、アトリエスタ食堂の2月の売上高は280万円だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大で、3月から徐々に落ち込み、現在は7割以上減っている。京セラドームの近くなので、野球が開催されないことも大きな打撃だ。片岡氏は「タグボート大正の店舗同士は仲が良く、皆で励まし合っている」と話す。
タグボート大正では緊急事態宣言に対応し、現在は施設内の11店舗が連携して宅配を手がけている。アトリエスタ食堂は「だしオイルカレー」(800円)などを無料配達している。
アトリエスタ食堂の現在の顧客層は若者やカップルが多い。今後は30~50代の女性客も増やすために、だしと洋食を組み合わせた新メニューを打ち出す予定だ。
(川原聡史)
[日経MJ 2020年4月29日付]
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