危機克服後に使える食事券買って応援 がんばれ飲食店
終わりの見えない新型コロナウイルスの感染拡大。あらゆる産業が被害を受けているが、とりわけ飲食店への打撃は著しい。疲弊する飲食店はどのような対策をとればよいのか。また消費者は、どう支援すればよいのか考えたい。
筆者は日ごろ、繁盛店や名店と呼ばれる飲食店を取材していて「飲食店は人なり」と実感している。いい料理人、いいサービススタッフ、それらを快適な環境で活躍できるようとりまとめる経営者がいてこそ、おいしくて楽しい食事ができると感じている。飲食店経営者はもし解雇の文字がよぎったら、求人で苦しんだ時期を思い出してほしい。
今回、多くの繁盛店の税務処理を担当している青葉総合税理士法人(東京・杉並)の代表である丸山真司税理士にお話しを伺った。
丸山氏は「とにかく飲食業界への被害は甚大です」と切り出した。店舗の宝とも言える、従業員の雇用を維持するための支援としては「雇用調整助成金」がある。「雇用に関する助成金は社会保険労務士の担当ですが、税理士、社労士をうまく活用して苦難を乗り切ってほしい」と丸山氏は話す。
日本政策金融公庫の「衛生環境激変特別貸付」、各地の信用保証協会の「セーフティネット保証」などは「申し込みに手間と時間がかかるが、諦めず挑戦すべき」と話す。融資の問い合わせ用に日本政策金融公庫の「新型コロナウイルスに関する特別相談窓口」がある。つながりにくい場合は、担当の税理士に相談するのも一案だ。
「飲食店経営者がまずやるべきは家賃の減額交渉です」とも丸山氏は語る。営業自粛や外出自粛で客足が途絶え、売り上げが出ないが、家賃、人件費、光熱費などの固定費の出費は落ちることはない。手持ちの予算を直撃する家賃の減額は真っ先に手を打ちたい。
「私たちのお客様でも、家賃交渉に成功している方は増えてきました。ただ、貸し手側にも事情がある」と丸山氏。そこで「いきなり半額というのではなく、折り合いを付けられる金額で交渉するのが成功のカギ」と指摘する。
丸山氏は税理士としての仕事の傍ら、ロケ弁専門の弁当店「ロケ弁864」(東京・杉並)も経営している。飲食店を自ら経営しているからこそ、苦しむ飲食店と同じ目線に立ったアドバイスといえる。
消費者はどのように支援すればよいだろうか。
すでにネットなどで、5月以降に使える食事券を先に購入して応援するサービスなどが話題になっている。類似したサービスは東日本大震災の時に、一部のレストランが提供していたが、被害が落ち着いた後、店舗を再開した際に通常客と前売り客が店舗に殺到し、チケットを使いたくても予約ができないという事態になったことも。意義のある仕組みだが、利用するなら"募金"と割り切れる優しさも必要だ。
地味だが、ひいきの店がテークアウトをしていたら利用する。長期休業していたら、電話やメールで応援メッセージを入れる、そんなささいな励ましが、街の財産とも言える名店の存続に一役買うと筆者は信じている。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2020年4月24日付]
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