もやしのひげ取り… 在宅生活、単純作業で心穏やか生活コラムニスト ももせいづみ

2020/4/21
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウン(都市封鎖)となったフランスの友人から「まわりの家や庭がどんどんきれいになっているよ」とメールが来た。忙しくてできなかった整理整頓や模様替えにいそしむ人が多く、暮らしを見直す絶好の機会と捉える人もいるのだそうだ。

日本では休校やテレワークで家族が家にいることで、ストレスや食事づくりの負担を感じる人が増えているようだ。非日常の体験が続き、メンタルのバランスを崩してしまうケースもある。簡単なことではないけれど、困難の中に少しでも明るいことを見つけながら、何とか乗り切っていきたいなあと思っている。

もともと家事は勉強やデスクワークではあまり使わない味覚、嗅覚、触覚も刺激し、五感を活性化してくれる。拭き掃除をする、風呂を洗う、料理をつくる、ゴミを片付けるといった行為で受ける刺激は、知らず知らずのうちに心身のバランスを取るのにも役立っていると思う。閉じこもりがちな家族には洗濯や掃除をどんどん任せて、運動不足の解消と心の健康につなげてもらおう。

もやしのひげを淡々と取る、野菜の皮をひたすらむく、落ち葉を掃くといったシンプルな動作を無心に繰り返す。これが落ち着かない気持ちを静める役目を果たすこともある。鍋の焦げを落としたり、くもった鏡を磨いたり、サッシの溝やベランダといった普段後回しにしがちな場所をきれいにしたりすると、最後はすっきりと達成感があって、気持ちがちょっと上向きになることも。負担を感じる家事には時短の工夫を重ねつつ、こんな時だからこそできることに目を向けてみて。

ただし無理は禁物。外出自粛の今はいい機会だからと「断捨離」にまい進している人の話も耳に入ってくるが、メンタルが弱っている時に許容量以上のことに手を付けると、気持ちが追いつかずに逆につらくなってしまうことも。

自分自身や家族の心の状態を丁寧にみつめて、時には甘やかして何もしないのも大事だ。きょうはもやしのひげを取ってみた。きょうは調子がいいから窓ガラスを1枚だけ拭いてみた。そのくらいのゆるいペースで、無理なく取り組んでみるのがいいと思う。

遊び心で家事を楽しんでしまう気持ちも大切に。「ぞうきんを一番真っ黒にできた人が優勝」と家族で拭き掃除コンテストをするとか、短く時間を区切って音楽でもかけながら「きょうは片付け祭だ!」と皆で盛り上がるというのも面白そう。家での時間に追い詰められないように工夫してみてほしい。

世界が大きく変容しようとしている時。自分の場所で、無理なく暮らしを整えながら、今この時間を乗り切っていきましょう。

ももせいづみ
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。新刊に「お弁当にスープジャー」(辰巳出版)、「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)など著書多数。

[日本経済新聞夕刊2020年4月21日付]

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