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イタリア革で個性、「イルビゾンテ」50周年 ルックHD

ブランド VIEWS

2020.4.26

ルックホールディングス(HD)が革製品ブランドの「イルビゾンテ」を強化している。2019年に同ブランドを109億円を投じて完全子会社化。これを機に出店を拡大するとともに、将来の海外展開も視野にいれる。




生産はすべてフィレンツェで

イルビゾンテが誕生したのは1970年のことだ。イタリア・フィレンツェでデザイナーを務めるワニー氏が立ち上げた。

素材の調達から縫製まで、すべてフィレンツェで行うのが特徴だ。商社を通さずルックHDが直接取引することで、価格を抑えてきた。

価格はキーケースで6千円程度、名刺入れは9千円程度。「フェラガモ」や「グッチ」といったイタリアの著名革製品ブランドと比べて価格帯は低めだ。このため若年層でも、比較的手軽に購入できるのもブランドの魅力の1つとなっている。

ルックHDは1999年からイルビゾンテの独占輸入販売を開始。直営店の出店も始めた。

当時は「プラダ」や「ルイヴィトン」など、高級ブランドの革小物が若者に大流行。そのなかでも「他人が持っている小物は持ちたくない」と感じる層の心をつかみ、販売を拡大していった。

またイルビゾンテは「ベジタブルタンニンレザー」と呼ばれる革を使っている。一般に用いられる鉱物ではなく、植物性のなめしを使うことで、インポートブランドを購入したいというおしゃれ好きな顧客に加えて、環境配慮に敏感な層をも取り込んできた。「売上高は緩やかな右肩上がりで推移してきた」(ルックHDの船越聖治課長)。

イルビゾンテが「中核事業に育ってきた」(船越課長)ことで、ルックHDは大きな決断に踏み切った。

ブランド浸透へ 店舗拡大めざす

イルビゾンテを手掛けるイタリアのビゾンテ・イタリア・ホールディング社の売上高は、18年12月期時点で3518万ユーロ(約43億円)。ルックHDの売上高の約1割にあたる規模にまで成長した。そこで約109億円を投じて、ビゾンテ社の完全子会社化を決定した。

ライセンス契約による事業展開には、契約解消リスクがつきまとう。事業規模が大きくなればなるほど、契約解消時の打撃も深くなる。三陽商会における英バーバリー事業の契約終了がその代表例だ。そこでルックHDは完全子会社化により、イルビゾンテを直接管理することを選んだ。

イルビゾンテは今年、ブランド誕生50周年の節目となる。50周年を記念し、創業者のワニー・ディ・フィリッポ氏の肖像画をプリントしたTシャツや、ワニー氏が書き下ろしたブランドロゴが描かれた革小物を今春から扱う。

革小物は、革本来の色を生かした財布などを取りそろえる。他社の革製品とはひと味違う「イルビゾンテらしさ」を追求し、ファンの裾野を広げる考えだ。

店舗展開も3月の札幌の店舗に続き、20年12月期にさらに3店を出店する計画だ。今後はアジアなど海外展開にも取り組む予定だ。

ルックHDは北欧ブランドのマリメッコやアパレルブランドの「A.P.C.(アー・ぺー・セー)」など複数の海外ブランドを日本に導入し、育ててきた。イルビゾンテをどこまで拡大できるのかが次の焦点となる。

(勝野杏美)

イルビゾンテ 1970年にイタリア・フィレンツェで生まれた革製品のブランド。皮の産地であるフィレンツェで生産するのが特長。ブランド名は水牛を意味する。日本では直営店や商業施設など41店を展開する。

[日経MJ 2020年4月10日付]

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