スーツ長持ちさせるコツ 消臭スプレーは使いすぎ注意洗濯家 中村祐一

新生活の始まる4月。新しい職場で新しいスーツに身を包むという人も少なくないだろう。お気に入りの一着は大切にしたいもの。スーツのお手入れについて、改めて確認してみたい。

服は値段が高いからといって丈夫で長持ちするとは限らない。艶のある高級素材は糸が細く、繊細な場合が多い。何度も着ていくうちに擦れ、けば立ちも起こりやすい。「高級なスーツほど傷みやすい」という前提で臨んでほしい。

スーツは普段着と違って毎日洗うものではないので、脱いだ後のケアがポイントだ。基本はやはりブラッシング。まず汚れをかき出すイメージで下から上へ。その後で上から下へ動かしてホコリを払い落とし、全体を整える。ブラッシングを習慣にして繊維表面の汚れやホコリの蓄積を防ぎたい。

ハンガーにかけるときはジャケットの肩幅にピタリと合うサイズのものを選ぼう。パンツもズボン用のクリップの付いたものを使いたい。ウエストの部分を下にしてかけると重みで膝の裏などのシワが伸びる。ただ全体的に伸びすぎてシルエットが崩れてしまう可能性がある。一晩したら、二つ折りにしてかけておくといい。

何着かを着回してスーツを休ませるのも長持ちさせるコツ。予算の問題や収納場所との兼ね合いもあると思うが、用意するのは多ければ多いほどいい。結果的に傷みにくくなる。

「脱いだ後はブラッシング」を習慣に
ジャケットのサイズに合うハンガーを選ぼう

頻繁に洗わない代わりに消臭スプレーで除菌消臭している人も多い。ただ使いすぎには注意。洗濯は洗剤で包んだ汚れを、すすぎによって他のところへ移す作業だ。スプレーだけではこのすすぎがされない。スプレーでニオイが一時的に消えたとしても、汚れそのものはとどまっている。スーツを傷める原因にもなるので、定期的にクリーニングに出しておきたい。

スーツはドライクリーニングが適しているとよくいわれる。ただドライクリーニングとは何かよく分からない人も多いはず。一言で説明すると、油で洗う洗濯。最大のメリットは服の形崩れを起こさないところだろう。

水(左)とドライクリーニング用の油の瓶(右)にトイレットペーパーを浸して振ると…
水の瓶ではボロボロに。油の瓶では形が残っている

例えばトイレットペーパーを水に入れてかきまぜると、グチャグチャに破れてしまう。しかしドライクリーニングで使う油に入れて同じようにかきまぜても元の形が残る。水で洗うと繊維が膨らみ、縮みや形崩れを引き起こす原因になってしまうのだ。

「ドライクリーニングをするとスーツが傷む」と言って避ける人がいると聞くが、それは誤解。私としてはむしろドライクリーニングほど衣類を傷めない洗濯方法はないと思っている。

スーツの下に着るシャツは毎日洗い、スーツ自体は数着を着回して適度に休ませつつ、月に1度くらいはクリーニングに出す。長い目で見ればこれが最も経済的ではないだろうか。

中村祐一(なかむら・ゆういち)
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。

[日本経済新聞夕刊2020年4月7日付]

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