3分間で在宅体操 巣ごもり生活でもバランス能力磨く
新型コロナウイルス対策で在宅生活を送る人が増えた。家にこもれば心身に変化が起こりやすく、体のバランス能力が低下しかねない。日常生活の根底を支えるだけに、自宅でできる運動で能力を維持したい。
自宅で過ごす時間が長くなり運動不足になると、筋力の衰えに加え体を支えるバランス能力が低下しやすくなる。反射や平衡を保つ能力が下がると、足元のちょっとした段差につまずいて転倒することもある。注意力だけの問題ではなくシニア世代以外にも関わる。対策が欠かせない。
バランス能力は、体が受ける刺激に対し脊髄神経が反射的に指令を送り、全身の筋肉が適切に反応すること。例えば足先が段差に触れた時、自分の意思とは関係なく体が自然に反射して転倒を防いでくれる。在宅時間が長くなり外部からの刺激が減ると、神経の働きや筋肉の反応に影響しかねない。体を意識的に動かすことが重要になる。
まずは、バランス能力が衰えていないかチェックしよう。幅5センチメートル、長さ3.6メートル程度のライン(粘着テープや畳の縁を代用)を準備して床を歩行するための目印をつくる。最初は(A)タンデム歩行で現状を確認する。ラインの端で両足をそろえて立つ。そして片足をラインの上に乗せ体重をかける。もう一方の足を踏みだし、踵(かかと)を片方のつま先に当てる。こうして交互に足を繰り出しバランスを取りながらライン上を進む。
指が3本ラインに乗るようにして前進しラインから外れないようにする。10歩以上、歩くことができればバランス能力が維持できている。
続いて、踵を常に上げて歩行する(B)つま先歩き、つま先を上げたままで歩く(C)踵歩きを試す。最後はラインと体の左右方向を平行にして、つま先で歩く(D)つま先歩きにも挑戦。(B)~(D)は10歩以上の円滑な歩行を目標にする。
続いてお勧めするのはバランス能力の維持・向上につながる「3分間サーキット」。ライン歩行がうまくいかなかった人も回復が見込まれる。
まずは肩幅よりやや広く横に脚を開いて戻す(1)サイドランジ。脚を開いたときに重心が中央になるようにするのがポイント。左右交互に10回繰り返す。続いて(2)斜めフロントランジ。45度程度前にやや大きく一歩踏み出して元に戻す。踏み出した脚の膝がつま先より前に出ないように注意する。再び(1)をこなした後に片脚を後ろに出して戻す(3)バックステップに取り組む。
(1)→(2)→(1)→(3)で1セットとして、それぞれの運動の合間に20~30歩程度の足踏みを挟む。(1)~(3)の運動は、反射神経の維持だけでなく、下肢の筋力の向上にもつながる。足踏みを挟むことで、持久力の維持も見込まれる。
運動不足を一気に挽回しようと意気込むことはない。無理なく試して続けることが重要だ。最初は足踏みのみでも十分。できそうな運動を選び、足踏みと交互に繰り返してもよい。足踏み時には息を強く吐くことを意識しよう。
コロナ対策が重要なこの時期、体力を過信せず適度な運動の刺激でバランス能力を維持し心身の健康を保ちたい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2020年4月4日付]
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