大動脈瘤は、破裂すると大量出血につながりやすく、危険な状態に陥るケースも少なくない。このため、こぶが破裂する前に発見し、手術して対処するのが最善策だ。発見はCTの検査で可能。定期的な検診が重要だという。

大動脈瘤の手術で使う人工血管。耐久性が高く手術後は一生使える

手術はこぶができた部分を、切除し代わりに人工血管で縫い付ける手法が一般的だ。慶応義塾大学の志水秀行教授は、「人工血管は耐久性があり、基本的には一度置き換えれば一生使える。手術の効果は大きい」と話す。

ただ胸や腹を開く手術をする場合、80歳代以上の体力が衰えた高齢者や心臓、肺に持病がある人には合併症などのリスクが高まる。

このため、バネのような金属網を人工血管に巻いた「ステントグラフト」という筒状の器具を使う治療法もある。足の付け根を数センチ切開し、動脈から細い管(カテーテル)を使ってさしこむ。

大動脈瘤のある位置でステントグラフトを固定すると、器具の中を血液が流れ、こぶに行かなくなる。こぶへの血流を遮断することで破裂を防ぐ。

胸や腹を開かないので治療時間、入院期間が短縮でき、体への負担は少ない。

川崎幸病院の場合、2019年1月から12月末まで1年間の大動脈の手術数は867件。このうち人工血管への置き換えが650件だったが、ステントグラフトを使ったものも217件あった。

治癒実績の向上で高齢者にも対応しやすくなったことで、手術件数は10年前の約3倍に増えた。

ただ、ステントグラフトはすべての患者に使えるわけではない。ステントグラフトを正常な血管に密着させる必要があるため、こぶができた場所によっては使えないことがある。

さらに、密着部から血液が漏れたり、枝分かれする血管から血液が逆流したりすることで、こぶへの血流を十分に遮断できない場合もある。実際、ステントグラフトを入れて半年後の定期健診で、動脈瘤が大きくなっていることがわかり、破裂予防のために追加治療をする事例もあるという。

志水教授は「患者の年齢、体力、持病のほか、こぶができた箇所や形状によってもどちらの治療方法を採用するか異なる。患者は納得のいくまで専門医から説明を聞くことが大事だ」と話す。

◇  ◇  ◇

主な原因は動脈硬化、CTで偶然発見も

破裂すると死亡に至ることもある大動脈瘤だが、早めに見つけて治療すればかなりの人が助かる。特に「違う病気の検査でCTを撮ったら偶然に見つかるというケースも非常に多い」(大島部長)ため、発症が増える60代以上の人は、還暦や退職をきっかけにCT検査を受けるのもよい。

見つかってもこぶをなくしたり小さくしたりする薬はなく、外科手術しか方法はない。経過観察し、大動脈の太さが正常な血管の約2倍になったところで手術というイメージだ。

こぶができる原因のほとんどは動脈硬化。喫煙はこぶをできやすくするといわれており、高血圧、高脂血症などがある場合にもこぶができやすい。禁煙し、血圧が高ければ降圧薬を服用、塩分が少なくカロリーに配慮した食事を心がける。

ウオーキングなど適度な運動も大切だ。大動脈瘤は確実に予防できる病気ではないが、生活習慣病対策で発症を抑え込むのが肝要だ。

(近藤英次)

[日本経済新聞朝刊2020年3月30日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
注目記事
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント