スマホでオーダーメード ワイシャツは写真2枚で採寸
新年度を控えシャツや靴を新調する人も多いだろう。新型コロナウイルスの影響で外出も控えがちだが、スマートフォンで自分の写真を撮るだけでサイズを計測し、オーダーメードできるサービスがあるという。
記者(54)は3月、三越伊勢丹が昨年10月から始めたスマホで服がオーダーできるサービス「ハイ・テーラー」でワイシャツを注文した。2年ほど前に注目を集めたZOZOのサービスは水玉模様の「ZOZOスーツ」姿で10枚以上撮る必要があったが、ハイ・テーラーは写真2枚で寸法が分かるという。
身長体重を入力し、正面と利き腕をスマホに向けた側面の2カットを撮影。特別な服は必要ないが、手首と足首が見え、できるだけ体にフィットした服が望ましいそうだ。
計測から注文まで10分程度。白い生地で基本的な細身のデザインを選び、価格は9790円。納期は最短3週間だ。サイズが合わない場合、初回注文、納品から10日以内なら作り直しができるという。
採寸の精度を「テーラーグランド」(横浜市)の長谷井孝紀さんに検証してもらう。
三越伊勢丹によると担当者の採寸との誤差は1%。体の実測値は長谷井さんの採寸もハイ・テーラーの方がお尻周り8センチ、首回りが1.5センチ小さかった以外はほぼ同じ。完成品は10年前に英国王室御用達シャツ店でオーダーしたシャツと比べたが、首回りが1.5センチ大きい程度。この道20年の長谷井さんは「首回りは洗濯による縮みを考慮すれば許容範囲。裾周りに引っ張りジワができるが、価格を考えれば上出来」と評価する。
ファッションビジネスジャーナリストの松下久美さんによると、服飾関係の販売でスマホの採寸が広まったのはこの3年ほど。「画像解析技術とスマホのカメラの進化が背景にある」(松下さん)
ハイ・テーラーは中国TOZI社開発の最新計測技術「ワン・メジャー」を活用する。膨大な人体計測データを基に人工知能(AI)が輪郭と身体的特徴から3次元(3D)データを予測し、仮想空間上のアバター(分身)で採寸するという。
婦人靴では珍しいオーダーメード通販を扱うキビラ(東京・中央)。片足ずつA4の白い紙に乗せ、写真1枚で採寸完了。10種類のサイズとSMLの3種類の幅から最適なサイズを推奨するパターンオーダー。左右異なるサイズに対応し、約1カ月で完成だ。
店頭で受注したオーダーメード約15万件のデータの蓄積から2次元の情報だけでも3D並みの精度で再現できるという。35~40歳の女性を中心に約1000足を販売した。
都内で会社を経営する神山佳夏さん(46)は爪先がとがったポインテッドトウのハイヒールを注文した。価格は1万円強。採寸結果と完成品を専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ(東京・渋谷)の靴作り講師、紀井長(ながし)さんに見てもらった。
実は当初、アプリが推奨したサイズの靴は足が入らず、2サイズ上げて作り直してもらった。作り直した靴は「これまで買った中ではベスト」(神山さん)の出来栄えだったようだ。一方、神山さんの足を実測した紀井さんは「アプリの推奨はあり得る長さだったが、神山さんは一般より甲が薄く幅が広い。とがった爪先ではサイズを上げるしかなかった。もともと爪先の形状が足の形に合っているとはいえない」と指摘する。
キビラの玉井摂人マーケティング部部長は「オーダー靴の平均値からサイズを推奨するので誤差は生じる。特にポインテッドのハイヒールは足幅が広めの人には合わないことがある」と話す。1回までは無料で作り直せるが、97%が1足目で満足するという。
シャツは納得の出来だったが、靴は好みや慣れの違いで難しい面もあると感じた。
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最適な靴、在庫からお薦め
高精度に足を計測して在庫の中から最適な靴を推奨するサービスも広がってきた。ZOZOは専用マットに足を乗せてスマホで撮影すると、人工知能が通販サイト内から満足度の高い靴を提示する。伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)は25日から紳士靴売り場で3次元計測器を使い、約400種類の在庫から最適な靴を薦めるサービスを始めた。お薦めの革靴を履くとZOZOはぴったりだったが伊勢丹はやや大きめ。百貨店の客は大きめを好むためらしいが、目星が付く分、客を待たせる時間は減らせるそうだ。
(堀聡)
[NIKKEIプラス1 2020年3月28日付]
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