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月収超えるご当地ビッグマック ベネズエラは410円

日経MJ

味は本家の「ビッグマック」と大きく異なる
味は本家の「ビッグマック」と大きく異なる

独裁政権の下、経済混乱が続く南米の産油国ベネズエラ。物不足が続く中、同国のマクドナルドが独自の進化を遂げている。世界共通のメニューであるビッグマックは材料を変え「ビッグメルト」として販売される。単品で29万9千ボリバルソベラノ(Bs、約410円)と月額最低賃金の1.2倍にあたり、庶民の手に届かない存在だ。

ベネズエラの首都カラカス。長びく経済低迷のあおりでシャッター通りが続く商店街の一角に、見慣れた「M」のマークが描かれた赤い看板が目に入った。日本では気軽に入れるファストフードだが、治安の悪化するベネズエラでは入り口に警備員がたたずむ、ものものしい雰囲気だ。

他の国のマクドナルドと違うのは雰囲気だけではない。メニュー表にならぶハンバーガーの写真には、「クリオジョ(地元の)」というマークがついている。ベネズエラの独自商品だ。

左派政権の長年の失政により、ベネズエラの産業基盤は壊滅。マクドナルドの品質基準を満たすサプライヤーがいなくなっている。2015年にジャガイモの代わりにキャッサバを使った「ユカフライ」の提供をはじめたのを皮切りに、16年に看板メニューであるビッグマックの提供を停止。気がつけばほとんどのメニューはクリオジョとなっている。

物珍しさで、ビッグメルトを注文してみた。メニューの写真こそ本家ビッグマックとほとんど同じだったが、包装紙の下にあるのは貧相な様相のハンバーガーだ。口にすると、バンズはパサパサで、ハンバーグも肉汁が全くない、似ても似つかぬものとなっていた。

期待外れに終わったマクドナルド探訪だったが、ハイパーインフレが続く同国では高根の花。月額最低賃金(25万Bs)を払っても買うことができない。これらの商品を購入できるのはドルを保有する、一部の特権階級の人間だけだ。

店内では若者の集団がハンバーガーを食べながら談笑する一方、店の外では食料を探すためにゴミ箱をあさる人々の姿があった。マクドナルドを通じて、この国の現状を垣間見た気がした。

(サンパウロ=外山尚之)

[日経MJ 2020年3月15日付]

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