上顎から頭部につながる側頭筋に負担がかかり過ぎれば頭痛がおこる。下顎から肩周りにある咬筋や僧帽筋がこわばると、肩こりにつながる。天野氏は「奥歯のトラブルは奥歯だけにとどまる問題ではない」と、注意を促す。
勤続疲労のケアには、虫歯予防を意識した歯磨きが欠かせない。食後30分以内の歯磨きや、歯と歯の隙間を磨くなどを心がける。それでも抜歯を余儀なくされた場合、周囲で働き続ける歯にも影響してくるので、そのまま放置しないようにする。
虫歯や抜歯後の対策については、新たな治療法も登場している。例えばブリッジ。抜いた歯の両脇の歯を支えとして人工の歯を橋のようにかけるもので、かつては金属製が多かった。最近は自然なかみ合わせが得られるように樹脂製のものも出回るようになった。「金属製より歯を削る量は少なくてすむ」(天野氏)メリットがある。また、虫歯だけを除去する薬剤も登場。歯をなるべく削らないことで、寿命をできる限り伸ばす治療法が広まっている。
奥歯の状態をしっかり良好に保つことは、QOL(生活の質)に直結する。信頼できる歯科医を見つけて早めに対策することが肝要だ。
(ライター 大谷新)
[NIKKEIプラス1 2020年3月14日付]