人工肺の首都圏チーム率いる 生命預かる現場と密着テルモ 前田大吾さん

テルモの前田大吾さん
テルモの前田大吾さん

心臓の外科手術中に人知れず患者の命を預かる装置がある。一時的に肺の機能を代替する「人工肺」だ。国内最大手のテルモで全国首位の営業成績を収めるのが首都圏チームリーダーの前田大吾さん(40)。クレームも含めて医療現場の声に誠実に向き合い、厚い信頼を勝ち取っている。

「冷や汗をかいた。すぐに来てほしい」。前田さんが真価を問われるのは、医師からこんな電話が掛かってきた時だ。手術中に人工肺の動作が思い通りにならず苦労したという内容。患者の命を預かる重圧ゆえに、そんな時の医師の口調は荒くなりがちだ。

前田さんは若い頃は動揺したというが、今は「一緒に慌てない」と自分に言い聞かせ、素早く冷静に対応する。

信頼の証し実感

前田さんは入社から一貫して、心臓手術に使う医療機器を担当してきた。主力製品の一つが人工肺だ。患者の大静脈から専用チューブで取り出した血液に酸素を与え、大動脈に戻す。心臓や肺への血流を数時間止めても血液循環を維持できるので、心臓の弁などを手術しやすくなる。

テルモにとっては伝統ある製品だ。1982年に中空糸膜と呼ぶ独自技術の人工肺を発売。血液に酸素を与える性能の高さや血球に与えるダメージの少なさから医療現場の支持を得た。今では国内で50%強、世界で25%のシェアを持ち、テルモの業績を支える製品の一つになっている。

患者の命に直結するため、医師は何より品質を重視してメーカーを決める。「営業成績がすなわち信頼の証し、と実感できるのがうれしい」と前田さんは話す。

それでも時にクレームが出るのは、最適な使い方が難しい面もあるからだ。想定とは違う使い方をして性能が出なかったり、思わぬトラブルを招いたりすることがある。

例えば血液の塊(血栓)を作らせない抗凝固剤と呼ぶ薬の使い方。投与しすぎると出血を起こすリスクが高まるため、現場ではメーカーの想定量よりも少なめに使うことがある。すると人工肺中に血栓ができやすくなり、クレームにつながる。医師の目には装置側の問題と映るからだ。

「おそらく使い方の問題だろう」。前田さんはそう感じても、医師のもとへすぐ駆けつける。使われた人工肺の現物を手にすることが、信頼を取り戻す第一歩だからだ。

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