おにぎり・そば… アレンジ色々、沖縄のポークたまご
沖縄のポークたまごは食堂や家庭の定番料理だ。ポークランチョンミートをフライパンで焼き、卵焼きを添えた一品で、米国の食文化の影響を受けた沖縄の代表的な県民食といえる。おにぎりに定食にと、観光客の人気も高い。
2月中旬、注目の店を訪れた。那覇市のポークたまごおにぎり本店。ポークたまごを具材にしたおにぎりで知られ、那覇空港内の2店を含め県内で4店を構える。2020年2月末にはハワイに進出した。「おにぎりを通じて沖縄の食文化を知ってほしい」。社長の清川勝朗さんは話す。
本社近くの牧志市場店は14年に開業した1号店で、連日のように観光客が列をなす。ポークたまごのほか、沖縄独自の食材のゴーヤーやチキナー(カラシ菜の塩漬け)を使ったおにぎり12種を提供。1日に1千個を販売する。
清川さんは大阪府出身。沖縄に憧れ、00年に当時30歳で移住した。その後地元の女性と結婚。「朝の食卓で出てきたあつあつのポークたまごおにぎりに衝撃を受けた」。多くの人に味わってもらいたいと始めたのが同店だった。
「手間はかかるが、出来たてが一番おいしい」と、店内で注文を受けてから一つ一つ手作りする。おにぎりはほかほかで1個でもかなりのボリュームがある。
次に定食を味わおうと、軽食の店ルビーに足を運んだ。同店は米軍基地の食堂で働いていた女性創業者が1962年に開店した老舗食堂。メニューは約60種で、多いときは1日に400人が来店する。
国道58号沿いにある同店は歌手の安室奈美恵さんがデビュー前レッスンしていた頃に通った店として有名だ。創業者の親族で当時を知るスタッフの知念マリアさんは「引退後の今も聖地として訪ねてくるファンが多い」と語る。
「ポークとたまご」の定食も観光客がよく頼む。プレートにライスと千切りキャベツなどが添えられる。「お客さまに満足してもらえるよう」(知念さん)、盛り付けは多め。お代わりは半ライス1回が無料、アイスティーは自由とうれしいサービスもある。
那覇空港ターミナルビルにある空港食堂はポークたまごを定食のほか、沖縄そばの具材としても提供する。2001年に空港の従業員向けの食堂として開店したが、一般客も受け入れている。支配人の玉栄正徳さんは「定食は当初からあったが、そばは現場のアイデアで後から追加した」と話す。するするといけるそばは時間に追われる人にぴったりだ。沖縄に来たらいろいろなポークたまごを味わってほしい。
ポークランチョンミートは塩や香辛料を利かせた豚肉の缶詰。第2次世界大戦前、米軍から米ホーメル社が携行食の開発を頼まれたのが始まりという。沖縄では戦後の米軍統治下で普及した。豚肉が好きな土地柄で「貧しい時代に保存でき手軽にとれるたんぱく質として重宝された」と沖縄ホーメル営業部次長の上原永司さんは語る。
沖縄では同社が輸入する「スパム」とデンマークのチューリップ社の製品が2大ブランド。家庭では炒め物やみそ汁の具にも使う。スーパーの特売品の目玉でもある。
(那覇支局長 佐藤一之)
[日本経済新聞夕刊2020年3月12日付]
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