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高機能スポーツアパレル人気 デサントのオルテライン

ブランド VIEWS

2020.3.11

デサントが展開するスポーツウエアブランド「DESCENTE(デサント)」の高機能アパレルが人気を集めている。もともとスキーウエアなどから始まったが、日常使いができるアウターなどに商品群を拡充。なかでも2012年に出した5万円台が中心の高価格帯カテゴリー「オルテライン」は機能的でありながら、シンプルなデザインが支持を受けている。




デサント流のものづくりを追求する精神が凝縮

万博公園(大阪府吹田市)にほど近い「デサントブランららぽーとエキスポシティ店」。白を基調とした店内には、オルテラインの商品を中心にシンプルなデザインが目に留まる。

ただ、内に隠れた機能面はシンプルではない。衣服内の温度を保ち、手に水が入りにくい設計の「ハードシェルジャケット」など、高い機能をうたう。高機能ながら普段でも使えるデザインに仕上げており、機能を突き詰めて形にするというデサント流のものづくりを追求する精神が凝縮されている。

社名とも同じ名前を冠したブランドの始まりは1961年にさかのぼる。当時はスキーウエアなどから立ち上がり、防寒だけが重視されがちだった商品が多いなか、素材やパターン設計に工夫を凝らして「速さと美しさ」を追求した。

その後、ランニングやバレーボールなどにカテゴリーを増やしていったが、2000年代にトレーニングウエアにもラインアップを広げたところ、思わぬ壁にぶち当たった。

デサントの名はスキーなどの分野では知名度は高かったが、アパレルとしてはほとんど知られていなかった。認知度を上げるにはどうするべきか――。そこで選んだのが、原点に立ち返り、とことん納得がいくものづくりを追求することだった。

ただ、当時はデフレが進行し、大量生産方式でコストを下げて安く売ることが良しとされる時代。社内の反発も強かったが、他社と同じでは違いを出せないとの思いから、ものづくりに総力を挙げた。

水が入りにくい「水沢ダウン」で人気に

こうして生まれたのが、08年に発売したダウンコート「水沢ダウン」だ。一般的に雨や雪に弱いとされるが、特殊な接着技術で縫い目をなくし、水が入りにくい構造に仕上げた。

岩手県の水沢工場で生地の裁断・加工し、熟練の職人が一つ一つ仕上げる。「ダウンコートの製造は中国に移管されるケースが多く、日本製は珍しかった」(デサントBM杉浦剛マネージャー)という。

転機は10年のバンクーバー五輪。開会式で日本代表選手が着用したことで、認知度が上がり、8万円からという高価格帯ながら人気商品へと育った。

そこで12年に新カテゴリーとして水沢ダウンなどを中心としたオルテラインを立ち上げた。日常使いできる高機能アパレルとして、映像クリエーターなど既存の顧客とは違う層の取り込みにつながった。

オルテラインはデサントブランドの成長をけん引しており、同カテゴリーを販売する「デサントブラン」店の売上高は年20%のペースで右肩上がりが続く。今後はオルテラインに次ぐ新たなカテゴリーを創出し、デサントブランドのさらなる拡大を目指す。

(斎藤毬子)

DESCENTE(デサント) 社名と同様に、フランス語で滑降を意味する「デサント」に由来し、スキーウエアなどで展開を始めた。オルテラインを扱う「デサントブラン」の直営店は全国に9店舗を展開する。スポーツウエアを街着として着る「アスレジャー」ブームも追い風に成長が続いている。

[日経MJ 2020年3月6日付]

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