グルテンで不調、治療法は食の見直し 指導なしは危険

小麦などに含まれるグルテンで体調不良になる疾病がある。対策は栄養バランスを保ちながらグルテンを取らないようにすること。一方、国内では、グルテンを断つ「グルテンフリー」をダイエット目的で捉える動きもあり、必要な栄養が取れなくなる例がある。適切な対処法を探った。

神奈川県で暮らす平野三枝子さん(53)は10年以上、原因不明の体調不良に悩まされた。耳鳴りがひどくなり、めまいと腰痛などの症状が続き仕事も辞めた。「何をしても楽しめなかった」(平野さん)。5年前から小麦を取らない食事に切り替えたところ症状が緩和した。

小麦などの穀物に含まれるたんぱく質のグルテンが原因となる疾病に「セリアック病」や「グルテン過敏症」などがある。セリアック病は免疫システムが過剰に働き小腸に炎症が起こる。グルテン過敏症は小腸に炎症を起こさないものの腹痛など心身に様々な影響が出てくる疾病だ。平野さんの不調も、グルテン関連の疾患によるものだった。

一般社団法人グルテンフリーライフ協会(東京・新宿)によると米国では約130人に1人がセリアック病に悩む。代表理事のフォーブス弥生氏は「診断が難しく、認知が進む米国でも診断には4年間かかる」と話す。日本でも知られるようになり、防衛医大の穂苅量太教授によれば症例は増えつつあるという。

グルテン関連疾病の根治薬は開発されておらず、「治療法はグルテンを摂取しないグルテンフリーの食生活のみ」(穂苅氏)というのが現状だ。患者は日々の食生活を見直す必要があるが混乱もある。国内では、グルテンフリーをダイエット法や健康法として捉え一般の人にも関心が集まっているためだ。こうした観点でグルテンフリーを売り物にした食品類もある。

必ずしも治療目的ではない場合、患者にとって正しい情報に基づくとは限らない。独自にグルテンフリーを進め小麦を使った食品を断つと、脂質や米飯を多く摂取しすぎるようになるなど、栄養バランスが崩れることもある。

東京女子医科大の消化器病センター・内科の大森鉄平准講師は「医師の検査や指導を受けずに、グルテンフリーを独自に進めるのは危険」と指摘。グルテンで不調になる自覚症状がある場合は、医師の指導を受ける必要がある。

食の専門家からの支援も目立ち始めている。小麦粉の代わりに米粉を使うことを提案するものだ。日本米粉協会(東京・千代田)は2018年に農林水産省のガイドラインに基づく「ノングルテン米粉認証」を設けた。グルテンについて厳しい基準を設け、クリアした米粉を認証。高橋仙一郎事務局長は「きめのこまやかな米粉は小麦粉に替わることができる」と話す。

小麦粉を一切使っていないことを明確にして売り出す米粉パン(東京都渋谷区のオンデンハウス)

米粉食品を扱うカフェ、オンデンハウス(東京・渋谷)では、米粉で作ったパンやピザを提供する。同店代表で日本米粉クッキング協会(東京・渋谷)代表理事の大塚せつ子さんは、「米粉のでんぷんを生かせば、麺やパン作りも可能だ」と話す。

米粉でもパンや麺類、ピザなどを作ることができれば、「小麦を断っても食品の選択肢を減らさずに栄養バランスを保ち、健康でおいしく味わえる」(大塚さん)。同協会では米粉料理の講師を自治体などに派遣している。

患者はグルテンフリーの食事を続ける必要がある。フォーブス弥生氏は「グルテンの有無を表示する仕組みがしっかり整うなら、患者に判断をゆだねるのも食生活が豊かになり有効だ」と話す。患者主体で食事を選べる仕組みづくりが急務だ。

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認証マークで分かりやすく

欧米ではグルテン関連の疾患への対策として、グルテンフリーの認証が進む。認証を取得すると製品にマークを付けられるようになり、消費者は一目でグルテンフリーだとわかりやすくなる。

特に欧州を拠点とする「クロスグレイン」の認証は基準値や生産過程の検査基準が高いとされる。国内でもいくつかの食品メーカーが欧米の認証を取得するが、費用がかかるという課題がある。

日本でも、農林水産省が主導で、米粉のノングルテン認証が18年度から開始された。いかに周知していくかが求められる。グルテンフリーライフ協会のフォーブス弥生代表理事は「ピクトグラムなど表示方法を工夫すれば、グルテン関連の病気の患者に選択肢を与えられる」と話す。

(田中早紀)

[日本経済新聞夕刊2020年3月4日付]