ジーンズメーカーのジャパンブルー(岡山県倉敷市)は「ジャパンブルージーンズ浅草店」(東京・台東)を2019年12月に開いた。インバウンド客の取り込みが狙いで、外国人が多い浅草に立地を選定。店内では岡山で生地の製造から縫製まで手掛けるこだわりを見せ、来店客に占める外国人の割合は2割に高めた。新型肺炎の影響も懸念されるが、「メード・イン・ジャパン」の魅力を海外に訴える拠点に据える。
レジ横に工場の織機の写真や実物の糸を展示
「外国人ファンを増やし、帰国後もインターネット上で購入してもらいたい」。ジャパンブルーの木村克也課長は意気込みをこう語る。新店は訪日客がよく訪れる浅草寺にほど近い商業施設内に設置。ジーンズやトップスなど150種類、約1千点をそろえた。
出店の狙いは、訪日客に帰国後も買ってもらうことだ。海外進出となれば、出店や広告などのコストがかさみ、現実的ではない。代わりに日本での出店で知名度を上げ、自社のネット通販で買うサイクル構築に動いた。今年からは中国で越境EC(電子商取引)にも乗り出す計画だ。
新店では外国人へのアピールに余念がない。日本産の特長である品質に対するこだわりが体感できる展示物を用意。レジ横には自社工場に並ぶ織機の写真や実物の糸、アイロンなどを並べた。来店客には生産の背景などを説明する。
ジャパンブルーではそもそも、製造機械の選定にこだわっている。織機は約40年前に製造された年代物だ。通常は大量生産が可能な最新の織機を導入するが、「ゆっくりと織る旧型織機の方が強度が高い生地ができる」(木村課長)
通常のアパレル店では店の片隅が定位置の「裾上げコーナー」も、ものづくりのこだわりを訴えるしかけに使う。裾上げ用の旧型のミシン「ユニオンスペシャル」は店の中央に配置。客の目の前で裾上げの作業を行うことで、生産の現場を店内でも体感できるようにした。
糸の選定から縫製まで一貫した国内生産
ジャパンブルーはジーンズの聖地と呼ばれる岡山県児島地区のメーカーで、糸の選定から生地の製造、縫製まで同地区で手掛けている。「縫製の一部を日本で行うことで国産をうたうメーカーも多いが、当社は一貫して国内生産にこだわる」(木村課長)といい、長年ジーンズファンに愛されてきた。
ただ、ジーンズ業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。ファーストリテイリングの「ユニクロ」を筆頭に、低価格のジーンズを売り出す企業が台頭。13年には同業のビッグジョンが経営危機に陥り、14年にはエドウインが業績悪化で伊藤忠商事の傘下に入るなど、国産ジーンズメーカーの苦戦が続く。
木村課長は「生き残りには海外進出か、付加価値をつけることが重要だ」と語る。店内に並べるジーンズは一本1万5千円程度と決して安くはない。それでも国産品の魅力を打ち出して勝負する。新型肺炎の拡大が訪日ブームに影を落とすなか、海外の顧客をつかむには継続的な取り組みが求められている。
(勝野杏美)
[日経MJ 2020年3月4日付]
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