雑菌から衣類を守る 放置厳禁・加熱…3つのポイント
洗濯家 中村祐一
新型コロナウイルスが広がっている。私も十分な休養やバランスが整った食事を取るなど免疫力をできる限り高めるようにして、自己防衛を心がけている。
ただ、ウイルスのまん延への対抗を含め、どう対処すればよいかわからないこともたくさんある。だからこそ、原理原則や基本に立ち返ることが大事だと考えている。予防策として入念な手洗いが推奨されていること自体、基本が大切である証拠だろう。
洗濯も同じだ。どれだけ洗濯したところで、新型コロナウイルスに直接の効き目はない。ただ、一人ひとりが衛生意識を高めることは多少なりとも公衆衛生上プラスに働くのではないか。今回はそんな問題意識から、衣類を清潔に保つための3つの基本ポイントを確認したい。
ぬれていて、なおかつ汚れた状態だと、あらゆる菌が繁殖しやすい。梅雨時に洗濯物から嫌なニオイが生じやすくなるのは菌の仕業だ。汚れのひどいものとそうでないものを可能な限り一緒に洗わないようにして、汚れや菌を他の衣類へ移すことのないよう工夫したい。
ぬれている時間が長いと菌は増える。洗濯終了後は洗濯機に放置せず、すぐに干すことも大切だ。
洗浄力が高い粉末洗剤を選ぶ
日ごろの洗濯でしっかりと落とすべき汚れは、皮脂やタンパク質だ。これらが残っていると、雑菌がエサにするので繁殖を招く。アルカリ性の洗濯用洗剤を選ぶと、皮脂やたんぱく質が溶けたり壊れたりしやすくなる。液体洗剤よりも粉末の洗剤や漂白剤を使うと効果的だ。
熱を活用する
いつもの洗剤を使っていても、お湯で洗ったり、お湯でつけ置きをしたりするだけで汚れ落としや除菌の効果は飛躍的にアップする。漂白剤の使用も同様だ。お風呂の残り湯は避けて、できるだけきれいなお湯がよいだろう。85度以上のお湯はデリケートな素材や色落ちがする服には向かないが、アルコールや漂白剤などが手に入りにくいときに使ってみるとよい。
乾燥機を使って衣類を乾かしたり、仕上げにアイロンを掛けたりすることも衛生的な仕上がりの一助になる。クリーニング店の洗濯では必ず、乾燥機やプレス機、スチームなどで熱を与えて完了する。シワを伸ばすだけでなく、殺菌効果を期待している側面もある。私が普段から下着類にアイロンを当てているのも同じ理由だ。
家庭の洗濯でも衛生状態をキープするために、乾燥機やアイロンをできる範囲で上手に活用してほしい。マスクや手洗い、うがいなどと並行して、一人ひとりができる範囲でより清潔な服を着用するよう心がけたい。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2020年3月3日付]
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