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石牟礼道子、没後2年で再評価 水俣病以外も海の文学

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NIKKEI STYLE

水俣病患者と家族の苦しみを描いた小説「苦海浄土」で知られ、2年前に亡くなった作家・石牟礼道子に今また光が当たっている。石牟礼文学の源泉として「海からのまなざし」が注目されている。

「空と 海と 島々と 夢見神 三千世界のいのちは わたし」

「潮が満ちて 貝が生まれて 木々が生まれて……」

ゆったりと歌声が流れる中、白装束の女性が鈴を鳴らしながら、円を描くように舞い踊る。

石牟礼の三回忌にあたる2月10日。彼女の著作全集を出版する藤原書店(東京・新宿)の本社で、彼女の詩を原作にした音楽劇「緑亜紀の蝶(ちょう)」の一部が上演された。

破壊に鋭い批判

基になった3編の詩「緑亜紀の蝶」「原初(はじめ)よりことば知らざりき」「魚とりパントマイム」は1970~90年代に発表され、いずれも海を主題に置く。すべての生命の源である大海原の豊かさを歌い上げると同時に、水俣病の原因である有機水銀を含む工場廃水による汚染など、海を容赦なく破壊する人間の仕業へ向けた鋭い批判の言葉が胸に突き刺さる。

「緑亜紀の蝶」は石牟礼の誕生日である3月11日、銕仙(てっせん)会能楽研修所(東京・港)で全編が上演される。演出を手掛けた笠井賢一氏はかつて、石牟礼の新作能「不知火」の演出も担当したことがある。「人間以外の生き物の視点を取り込んで表現できるのが、石牟礼さんの素晴らしいところ。危機の時代の先を照らし出すような働きがある。これからも彼女の作品を舞台にしていきたい」と語る。

過去の作品をまとめた出版も相次いでいる。

最晩年の2年間に詠んだ俳句21句を収める句画集「色のない虹」(弦書房)、完全版と銘打った「石牟礼道子全詩集」(石風社)などだ。

中でも未発表作を含む672首を収めた全歌集「海と空のあいだに」(弦書房)は、彼女の創作の出発点となった短歌の全貌が見渡せる。40年ほどかけて書き継いだ小説「苦海浄土」の大きな存在感に隠れがちだが、歌人の川野里子氏は「石牟礼さんの文学のエッセンスはすでに、短歌の中に十分出ている」と指摘する。

「いつの日かわれ狂ふべし君よ君よその眸(ひとみ)そむけずわれをみたまへ」

人間超えた視点

短歌を始めた10代のころの作品は、あふれるような個人の情念を31文字の枠の中で詠みあぐねている節がある。個人の悩みや苦しさではなく、さらに大きなテーマを表現しようとする過程で、幼いころから身近に感じていた海という存在が段々と大きくなっていったようだ。それは水俣病に対峙する前に始まっている。

川野氏は「海の霧われをつつめば心ふるふ魚身に還るすべは忘れし」という20代後半の歌に注目する。魚に戻る方法を忘れてしまったと嘆く石牟礼について「自分はもともと海にいたという意識があるのではないか。海を壊すことで発展してきた近代の日本とは反対の側から世界を描こうとしている」という。

そして、その試みは一人称の「私」を中心に据える近代短歌の枠組みでは困難だった。その結果、形式を散文に換えて、小説「苦海浄土」が生まれたと川野氏は見る。

東京での三回忌に出席した作家の池澤夏樹氏は、石牟礼の文学を「(水俣病の)告発の文学であることばかりが強調されて誤読され、冷遇されてきた」と評する。合理性を重視する近代の価値観では捉えきれず、論理的に分析や解説を試みてもうまくいかない部分が石牟礼の著作にはある。論理を追うよりもむしろ、作中に響く様々な人々や生き物の声を聞き漏らさないように「広く、深く読む必要がある」(池澤氏)文学だといえるだろう。

藤原書店では2021年以降、毎年2月10日を「不知火忌」とし、石牟礼文学に関連する催しを開く予定だ。「石牟礼さんの作品をもとに、西洋の亜流ではない日本の文学とは何かを問う機会にしたい」(藤原良雄社長)としている。

(郷原信之)

[日本経済新聞夕刊2020年3月2日付]

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