避難所生活、ゲームで疑似体験 トラブル続き頭抱える

NIKKEIプラス1

動線やスペースの使い方は実際に体を動かして確認するのも大事(静岡県が2019年に開いた訓練)
動線やスペースの使い方は実際に体を動かして確認するのも大事(静岡県が2019年に開いた訓練)

自然災害で家にとどまれない場合、避難所で暮らすことになる。慣れない生活は大変だが、避難者が自ら運営の中心となるケースも実は多いという。そんな時どう動けばいいのだろうか。

避難所運営をゲーム形式で疑似体験できると聞き、参加した。まず静岡県が運営に関わる住民や自治体向けに開発した「避難所HUG(ハグ)」。HUGは「避難所・運営・ゲーム」の略だ。約250枚のカードを引くたび、それぞれ事情を抱えた避難者が現れたり、予想もしないトラブルが起こったりと状況が刻々と変わる。避難所に見立てた間取り図を前に、対応策をシミュレーションする。

避難所では自治体の職員が面倒をみてくれると思うかもしれない。しかし「職員だけでは無理。地元の人も力を合わせてやるしかない」。県職員時代にHUGを考案した倉野康彦さんは強調する。

日本防災士会和歌山県支部が倉野さんを招いて2月上旬に開いた体験会に参加した。HUGはもともと地震を想定したものだが、今回は内容を変えた風水害バージョン。5~6人ずつの4グループに分かれ、前提条件の説明を受ける。7月末、雨が降り続き電車は運転見合わせ。河川氾濫の危険性も高まった状況だ。

イベントに対応しながら、様々な避難者情報が設定されたカードを配置していく避難所運営ゲームHUG(和歌山市)=大岡敦撮影

備蓄品リストや5メートル四方のマス目の上に描かれた間取り図を眺めつつ「体育館や教室に避難者が入る前に通路スペースを確保しておかないと後で動けなくなるよね」と対策を練る。いよいよスタート。ひとりがカードを引く役となり、読み上げていく。

最初は余裕。しかし悩ましい事態が頻発する。「個人情報があるので事務室や職員室は使わないで」「盲導犬を連れた夫婦はどこにいてもらう?」「預金通帳を忘れた。帰っていい?」「停電だ!」

高齢者や障害を持つ人、外国人、乳幼児が次々とやってくる。ゲームは1時間。残り時間が告げられ、気持ちは焦る。それでも「どうしよう」とつい考え込み、判断が遅れる。250枚読み終えられないグループが続出した。

終了後に迷った点を話し合う。まずはペット。「犬がやかましい」と声が挙がるイベントがあった。しかし同伴避難は今や珍しくない。「ペット連れだけの部屋をつくろう」「車に置いてもらう」と対応は割れたが、ルールは考えておくべきだった。プライバシーも話題に。「一家で車中にとどまりたい」人が出現。「避難が長引くと心配」という指摘が出たが、悩ましい。

注目記事
次のページ
拠点開設、手助けグッズも