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趙さんは現場を飛び回り、消費者の動きを感じようとする

趙さんは現場を飛び回り、消費者の動きを感じようとする

全国で一律の品ぞろえとみられがちなコンビニエンスストアだが、ローソンでは約300店に輸入食品売り場を設けている。売り場作りに携わるエリアマーケティング部の趙美蘭さんは、外国人が多く居住する地区を巡り、リサーチを重ねている。

外国人人口が全体の1割超を占める東京都新宿区。「ローソン新宿靖国通店」には、陳列棚のうち幅約90センチを輸入食品に割いている。取り扱うのは、「ブルダック炒め麺」など韓国で人気の商品など約30種類。中国のハーブティーやイスラム教の戒律に従ったハラル認証のココナツジュースなども並び、いずれも好調な売れ行きという。趙さんのリサーチのなせる業だ。

現在の展開地域は東京が約230店、北海道が約50店、埼玉県が約20店。趙さんが企画し、まず2018年8月から新宿区などの約80店で始めた。フランチャイズチェーン(FC)加盟店オーナーから「商圏内に外国人が多くいるが、何かいい商品がないか」と言われて考案した。

大学生まで韓国で過ごし、交換留学で来日した。留学を終え、日本の大学院に進学した後、新卒でローソンに入社した。「訪日外国人の場合、日本っぽいものが好まれる。日本在住の外国人の場合、ふるさとの懐かしいものがいいだろう」

自分が食べたくなるものはもちろん、現地に住む友人にも連絡を取ってリサーチした。導入した結果、1日の売り上げは1日1000円増えた。1店舗1日当たりの売上高が約53万円(18年度)の同社にとってては大きな売り上げアップだ。購入客をみると、日本人の女性客も多く購入していた。

新宿靖国通店には、趙さんの似顔絵入り店頭販促(POP)が多く掲示される。「韓国ファンの日本人にも受けるかもしれない」との発想からだ。辛いラーメンの商品には辛さのレベルをトウガラシの数で示すほか、「私は7歳から余裕で食べられました(韓国では3歳くらいから食べる子もいます)」などと自身の経験に基づいて記す。POPを付けると、手に取ってみる女性客がさらに増えたという。

1~2週間に1回、羽田空港内や新宿の店舗に行き、利用客の反応をうかがう。東京・新大久保や大阪・鶴橋などにも行き、人気な商品をリサーチする。新大久保には月2回は通っているという。「オフィスにいると感覚が薄くなる」からだ。

コンビニは既存店客数の伸び悩みが続いており、店舗ごとのニーズに合わせた特徴の重要性が増している。外国人のニーズに合った商品で来店客を呼び込めれば、普通の買い物での来店も見込める。

取扱店舗の拡大も視野に入れるが、輸入品だけに時間もかかるし、供給が安定しない。だが「今後も品ぞろえを増やし、カバーできていない国の顧客にも提供していきたい」と意気込む。目指すのはグローバルに懐かしさを誘う新しいコンビニ像だ。

(矢尾隆行)

[日経MJ2020年2月17日付]

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