夜カフェのお楽しみは「炊きたてご飯」 東京・吉祥寺
飲食店に、はやり廃りはつきものだが、それでも繁盛を続ける店には必ず工夫がある。JR吉祥寺駅(東京都武蔵野市)から徒歩5分の場所にある「八十八夜」も、そうした工夫を積み重ねながらお客に愛されている店だ。
オープンは2009年11月で、業態はカフェレストラン。いわゆる「カフェめしブーム」の時流に乗って人気を博した。ただおしゃれな料理を提供するだけでなく、食材、特に野菜の仕入れに心を砕き造り上げた、オーガニック(有機)関連のメニューをそろえるのが特徴だ。
運営するのはクロール(東京都武蔵野市)。昼は近隣の主婦やビジネスパーソンでにぎわい、夜は地元客がダイニングとして利用している。
店舗はテラス席8席を含む59席があり、ランチは1.5~2回転、ディナーは1~1.5回転する。ランチの客単価は1200円前後、ディナーは3500円前後なので、気軽に利用できる。夜でもカフェ利用客がいるので、客単価は控えめだが、にぎわいは途絶えない。
八十八夜で特に人気なのが18年、長嶺真子店長が発案した「2人で楽しむペアプラン」だ。
このプランは料理の品数で税別3千円コースと、5千円コースを用意。たとえば、3千円コースならば、「本日のサラダ」から始まり、季節のスープ、おつまみ、メインなど料理7品、デザート1品がセットになっている。品数も豊富で、ボリュームもほどよいと感じた。
このコースに決めてしまえば、メニューを選ぶことで会話を遮ることがないことから、話を楽しみたいというカップルに好評だ。
ちなみにドリンクは生ビールが580円、ワインのボトルなら1本3400円から注文できる。カフェ営業もしているので、ソフトドリンクの種類が充実していた。
使い勝手の良いコースだが、店側にもメリットがあった。このコースをはじめるまではディナーの客単価は2800円前後だったが、ワインなどお酒メニューの見直すとともにコースプランを確立したことで、現在では3500円まで上昇したという。
この店のメニューには目をひく特徴がある。それはディナーに限り「炊きたてのご飯」が注文できること。「土鍋炊き白米ご飯」は、魚沼産こしひかり、ササニシキなどを季節変わりで用意。1人前620円~2人前930円で販売する。
さらに季節感のある炊き込みご飯も注文できる。取材時には「岩中豚とみかんの塩炊き込みご飯」(1450円)など、ユニークな炊き込みご飯も見かけた。炊き込みご飯は前述のコースメニューに盛り込まれており、4種類から選ぶことができる。
八十八夜のコースは、フレンチやイタリアンとは違う、普段使いのメニューが次々と提供される。この気軽さが、常連を増やしているのだろう。
(フードジャーナリスト 鈴木桂水)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。"美味しい料理のその前"が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。
[日経MJ 2020年2月14日付]
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