日韓「慰安婦」だけでない 欧州も歴史認識に深い亀裂北海道大学教授 長谷川貴彦

注目される公共史

実際のところ、マルチメディアの発達によって、歴史博物館や史跡がかたちを変えて、歴史家たちは集合的記憶の形成のプロジェクトに積極的に関わるようになっている。アカデミズムと市民社会をつなぐ領域では、パブリック・ヒストリー(公共史)といわれている分野が新たに注目されている。剣持久木編『越境する歴史認識』(18年・岩波書店)は、ヨーロッパの戦争博物館の展示などを素材として視覚を通じた歴史認識のかたちを提示している。また菅豊、北條勝貴編『パブリック・ヒストリー入門』(19年・勉誠出版)は、このテーマに関する理論と実践についての多様な論点をほぼ網羅的に取り上げており、この間の研究の到達点を示す。

いまや歴史認識は、特権的な歴史家の専有物ではなく、人びとの日常レベルで生産され再生産されるものであり、また政治的な紛争と衝突の場だけではなく、未来に向けて多様な発展の可能性に開かれたものとなっているのである。

[日本経済新聞朝刊 2020年2月8日付]

「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて

著者 : 大沼 保昭
出版 : 中央公論新社
価格 : 924円 (税込み)

記憶の政治――ヨーロッパの歴史認識紛争

著者 : 橋本 伸也
出版 : 岩波書店
価格 : 2,750円 (税込み)

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