ほくほくのイモに小豆あんの甘み 熊本・いきなり団子

2020/1/30
まんじゅう乃池田堂のいきなり団子はずっしりした重み
まんじゅう乃池田堂のいきなり団子はずっしりした重み

いきなり団子は熊本の家庭で作られてきた伝統的なおやつ。輪切りにした生のサツマイモに小豆などのあんをのせ、小麦粉を練って薄くのばした生地にくるんで蒸したらできあがりだ。「いきなり」の由来は「来客があってもいきなり、すぐにできる」や、生のイモから作るため漢字で「生成」と書いたのをいきなりと呼んだ、など諸説ある。

2019年10月に県やJR九州が開いた「いきなり団子選手権」で1位に輝いた玉名市のまんじゅう乃池田堂を訪ねた。1日140個ほどを2人で手作りしている。40分ほどで蒸し上がった手のひらに収まるくらいの団子は、約80グラムでずっしりとした重みを感じる。できたてをほお張ると、甘みを抑えた小豆のあんこのおかげで、ホクホクのサツマイモの甘さが伝わってきた。

店長の池田真規さんは「卵焼きの味が家庭ごとに違うように、いきなり団子も作り手によって違ってきます」と教えてくれた。確かに熊本市のホームページで紹介している団子だけでも20店ある。県全体なら100を超える店があるといわれる。

芋屋長兵衛の工場。生地に包む工程は職人の手作り(熊本県益城町)

農林水産省の調べで、熊本県の18年のかんしょ(サツマイモ)生産量は全国6位の約2万2千トン。阿蘇山の火山灰の土壌が栽培に適していて、阿蘇の西側が主な産地だ。その一つ、益城町に本社がある農業生産法人コウヤマが団子を商品化してヒットさせた。「芋屋長兵衛」ブランドの熊本いきなり団子だ。

同社の堤洋介常務によると、契約農家を含め50ヘクタールの農地で栽培される年1千トンのサツマイモのうち3割ほどを団子に使用している。熊本空港近くの工場では1日に約1万個を生産。ほとんど機械化されているが、団子を包む工程は職人による手作りで、素朴さを失わないようにしているという。工場のそばの直売所で、できたての団子が食べられる。現在はプレーンや生地によもぎや黒糖を混ぜた計5つの団子を販売している。

華まる堂の冷しいきなり団子はしゃりしゃりとした食感が楽しめる=同社提供

いきなり団子は県内の主要な駅や空港でも販売されているほか、冷凍した商品を全国配送する店もある。生のイモを使用しているため、常温ならその日のうちに食べることが望ましい。冷凍なら3カ月ほど保存が可能だという。

変わり種の団子もある。熊本市中央区の華まる堂の冷しいきなり団子は、冷凍した団子を半解凍の状態で食べるとおいしい。中のサツマイモがしゃりしゃりしていて、和風のスイーツのようだ。いまの時期は合格祈願シールがついた、いきなり合格団子も販売されている。

<マメ知識>商標登録でブランド化
全国にはいきなり団子に似たおやつがいくつかあるため熊本県菓子工業組合はブランド確立のため2012年に専門部会を設立。「熊本いきなり団子」を地域団体商標に申請し、17年に登録された。
商標の運用管理規定に団子の定義がある。(1)サツマイモを小麦粉など生地に包んで蒸す(2)熊本県内で生産されたもの(3)サツマイモとともに小豆やカスタードなどを包んでもよい――とされている。(3)であんを限定していないのは、多様な味の団子が開発されるように、という配慮だ。

(熊本支局長 石原秀樹)

[日本経済新聞夕刊2020年1月30日付]

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