ムンバイ青空市場のタマネギ 暴騰一服で1キロ62円
「何から何まで値上がりして、大変だよ」。ムンバイの自営業者、バガジ・バプラオさん(37)はこぼす。インドの消費者物価指数(CPI)は2019年12月に前年同月比7.4%上昇した。中でも野菜の値上がりが激しく、庶民の生活を圧迫したが、最近はようやく価格が落ち着いてきたようだ。
「1キログラムあたりタマネギは40ルピー(約62円)、ジャガイモは30ルピーだよ」。ムンバイ中部のマトゥンガ・マーケットで露天商が売り込んでいた。40歳代の男性客は「タマネギはまだ少し高いが、だいぶ値下がりしてきた」と説明してくれた。タマネギは昨年、一時1キロあたり200ルピーまで値上がりしたといい、それに比べれば安くなったが、まだ従来より割高という。
タマネギはインド料理で大活躍の食材だ。クレープ風の料理「ドーサ」に軽食の「パニプリ」、天ぷらに似た「パコラ」、そして各種カレー。いずれもタマネギが使われ、それ抜きでは満足しないインド人は多い。同国の年間消費量は1550万トンを超えるとされる。
スーパーマーケットでは値段は違う。マトゥンガ・マーケットの近所にある高級スーパーでは有機栽培のタマネギしか扱いがなく、価格は1キロあたり99ルピー。ジャガイモも同じく、59ルピーといずれも露天商の2倍程度だ。このスーパーより庶民向けの店ではタマネギが54ルピー、ジャガイモが36ルピーだった。
近年普及してきたネット通販でも、タマネギは51~55ルピーとスーパーと大差がない。ネット通販やスーパーより市場で買う方が安いのはインドも同じだ。
19年は天候不順でタマネギの生産量が落ちたうえ、一部の卸売業者などによる買い占めで大幅に値上がりした。タマネギの高騰に抗議するデモも起きた。印政府はタマネギの輸出を制限するなどして価格抑制に動いた。その結果、タマネギの価格は落ち着いてきたが、物価全体は上昇傾向にある。
CPI上昇率は19年夏ごろから高まり、同年12月は5年5カ月ぶりの伸び率となった。CPIに占める比重が半分近い食料品が12%も上がった。特に野菜の値上がりは61%と突出。豆類が15%、肉・魚が10%、香辛料も6%それぞれ上がった。インドはベジタリアン(菜食主義者)が多く、野菜や豆類の物価上昇は国民の食生活を直撃している。
(ムンバイ=早川麗)
[日経MJ 2020年1月27日付]
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