他人の苦しみに共感 金子みすゞに感じる観音さまの目清水寺貫主 森清範氏

詩人、金子みすゞの作品に、清水寺の本尊でもある観音さまの目を感じているという。

「大漁」という題の短い詩があります。「朝焼小焼だ大漁だ/大羽鰮(おおばいわし)の大漁だ」で始まります。「浜は祭りのようだけど/海のなかでは何万の/鰮のとむらいするだろう」というものです。

松原さんの著書にもありますが、観音の目とは、自分が見ている対象そのものになりきる、ということ。他人の苦しみを自分の苦しみとして共感できるということです。みすゞの詩には、それがあります。

普段は公開していないのですが、寺の塔頭(たっちゅう)「成就院」には、この詩をもとに画家の中島潔さんが描いたふすま絵があります。10年ほど前に奉納していただきました。膨大な数のイワシの中に、童子がたたずんでいる構図で、生命の無常と輝きを伝えてくれます。

もうひとつは「積もった雪」。上の雪には「さむかろな」、下の雪には「重かろな」。中の雪には「さみしかろな」とそれぞれの立場になりつつ、同情を加えていて、感動的です。

(聞き手は編集委員 毛糠秀樹)

[日本経済新聞朝刊2020年1月18日付]

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