他人の苦しみに共感 金子みすゞに感じる観音さまの目清水寺貫主 森清範氏

森清範氏と座右の書・愛読書
森清範氏と座右の書・愛読書
年間数百万人が訪れる京都でも指折りの古刹のトップとして、30年以上、教化や指導につとめてきた。毎年12月の「今年の漢字」の揮毫(きごう)でも名高い。
もり・せいはん 1940年京都市生まれ。55年大西良慶師のもとで得度し、63年花園大卒業。88年に貫主、北法相宗管長に就任した。『心を活かす』など著書多数。

15歳で得度して清水寺に入り、その後、禅の臨済宗妙心寺派の系列の花園大学で学びました。毎週、月曜日の朝一番は当時学長で、その後に妙心寺派の管長も務めた山田無文先生の講義です。必修で全員が出席せねばなりません。禅の言葉で「提唱」と呼んでおり、師が宗旨などに関して弟子に説法をする意味です。

学問と仏道の行を一体としたような内容で、山田先生の生い立ちや実体験がにじみ出ていました。著書に活字として残っており、折に触れては読み返しています。本にある通り、父親は先生を裁判官にしたかったようなのですが、先生は10代で「論語」顔淵第十二にある「訴えを聴くこと、われなお人のごとし。必ずや訴えなからしめんか」に触発されました。

「訴えに関しての判断は私にもできる。しかし、訴えのない世界を作ること、それが私の願いだ」という意味です。先生はこの言葉に打たれ、遍歴の末、チベットへの探検でも名高い高僧、河口慧海と出会うこととなり、仏道の修行に入るわけです。

著書には講義での良い話が多く残っています。年を経て読んで、味わいが出てくるようで、書物のありがたさを感じています。

長く清水寺の貫主をつとめ、仏教界の要職も歴任した大西良慶和上。日本初の五つ子の名付け親としても話題に。そばにつかえ、その日常に接してきた。

和上は中国の4世紀の書家、王羲之に発する入木(じゅぼく)道という手法で書をしたためていました。字の通り、木に染み込むほど、たっぷりの墨を使います。

そばにいて、体の使い方、息づかい、精魂込めて書いている様子がありありとうかがえました。

本番で書き終えた後も、筆を洗いながら、薄くなった墨で包装紙の裏などに、4字の漢字が並ぶ手本の「千字文」などを見つつ、鍛錬を重ねていました。他人にも厳しかったが、ご自身にはもっと厳しい。「えらいもんやな」と思いつつ見入っていた日々でした。

和上の「選集」は講演や講話などを数多くまとめてあります。録音した内容からの書き起こしには、私もかなり力を尽くしました。時に読み返しながら、師の教えや思い出に触れ、気を引き締めています。

松原泰道さんは、山田無文先生と同じ臨済宗の僧侶で、一般向けに数多くの仏教書を執筆され、ベストセラーも出し、幅広く読まれました。中でも私は「わたしの般若心経」が気に入っています。

「色不異空、空不異色」という心経の核心部分を、誰でもが経験する恋愛感情や和歌などを使って、わかりやすい例で解説してあり、その手腕や工夫に感心します。

ビジネス書などの書評を紹介
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