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「節薬」しませんか? 飲み残しを薬局へ、服薬指導も

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NIKKEI STYLE

患者が飲み忘れなどで服用しなかった残薬を活用して、医療費のムダを減らす「節薬バッグ運動」が各地に広がっている。薬局などで患者に回収袋を配り、自宅で余った薬の持参を促す取り組みで、薬剤師による適切な服薬の指導を受ける機会にもなる。全国に波及すれば年間3300億円の薬剤費を削減できるという推計もあり、さらなる普及に期待がかかる。

「飲み残したお薬についてお気軽にご相談ください」。東京都葛飾区の「オゾン薬局」の窓口には、こんな文言の入った大きなポスターが貼られている。薬剤師は患者に自宅で余った薬の持参を呼びかけ、残薬を受け取るための布製バッグを無料で配布。回収した残薬が新たに処方された薬と同じだった場合に、薬剤師が医師の承認を得て量を減らす調整をしている。

この取り組みは葛飾区薬剤師会が2019年7月から区と協力して始めた「残薬調整支援事業」で、区内の会員薬局の半数以上にあたる約90軒が参加している。同薬剤師会による同年11月までの集計では、残薬で1カ月あたり40万~50万円程度の薬剤費を削減できた。年間で500万円超の削減を見込むペースだ。

同薬剤師会の秋山宗一郎副会長は「患者は医師に処方量を相談するケースが多かったが、薬局で残薬の相談をする意識が広がりつつある。さらに参加の輪を広げ、薬剤費のムダ削減に努めていきたい」と意気込んでいる。

残薬が発生する原因は飲み忘れが目立ち、患者自身が体調などをみて服薬をやめる判断を下すケースも少なくない。

17年度から「節薬バッグ事業」を展開する埼玉県所沢市は、明治薬科大(東京都清瀬市)などと2年間にわたって患者の服薬状況を調査。男女約100人を対象に実施した18年度調査の分析によると、「飲み忘れ」が最多で45%を占め、患者の判断で服薬しない「自己調節」が18%で続いた。

調査では高血圧症など生活習慣病の薬を服用する患者に残薬が多く見られる傾向が浮かんだ。所沢市国民健康保険課の森田英明課長は「自覚症状がないまま進行する病気のため、患者の危機感が低いことも飲み残しにつながった可能性がある」と指摘する。

複数の薬局を利用する患者に残薬が出てしまうケースも目立つ。森田課長は「かかりつけの薬局があれば、普段から処方量や薬との相性を相談できる。事業を通じ、適正な服薬で健康増進につなげたい」と話す。

「節薬バッグ」で残薬調整を促す運動が各地に広がるのは、膨張を続ける医療費の問題が大きい。厚生労働省によると、17年度の国民医療費は約43兆円で、このうち薬剤費を含む薬局調剤費は2割近くにあたる7.8兆円を占める。過去15年で倍増しており、対策が急務となっている。

厚労省は12年、薬剤師が受け取る調剤報酬を改定し、「薬剤服用歴管理指導料」として薬の飲み残しの有無を確かめることを新たに盛り込んだ。医療費の削減が期待されたが、半年後のファイザー日本法人の調査によると、残薬の確認をしてもらったと回答した患者は24%と低調だった。

全国に節薬バッグによる運動が広がれば、3300億円の薬剤費を減らすことができる――。この削減額を推計したのは、九州大大学院の島添隆雄・准教授(医療薬学)。12年に全国に先駆けて運動を始めた福岡市などの薬剤師会と共同でデータ分析を行っている。

島添准教授によると、12年に福岡市内の31薬局が252人から残薬を集めたところ、回収率は15.8%で、処方箋1枚あたりの平均削減額は2700円だった。前述の削減額の推計は、この額をもとに11年度に医師が全国で出した処方箋約7億7千万枚から試算した金額だ。

島添准教授は「福岡市の調査では8割ほどの残薬が再利用できた。患者自身の支払い負担が減るだけでなく、医療費の削減に貢献しているという意識も浸透している」と手応えを口にする。

一方、残薬を薬局に持ち込んでも保管状況が悪ければ廃棄せざるを得ない。薬は湿気や高温の影響を受けやすく、使用期限内であっても変質する危険性がある。日本薬剤師会の安部好弘副会長は「薬の成分が変わって体に害を与える毒性を持つこともある。開封前の薬でも劣化する可能性もある。迷ったら服用の自己判断は避け、薬剤師に相談してほしい」と呼びかけている。

◇  ◇  ◇

抗がん剤でも廃棄700億円超

新薬などの開発が進む抗がん剤だが、日本では使い切れない薬剤は廃棄されるのが一般的だ。慶応大の岩本隆・特任教授(経営学)は2017年6月までの1年間に販売された100種類の抗がん剤の総廃棄額を738億円に上ると試算している。

調査の対象としたのは、ガラスやプラスチックの瓶にゴム製の栓をした注射薬。薬剤の閉鎖式接続器具を用いて瓶を無菌状態に保って廃棄せず、分割使用した場合を想定した。

薬は20ミリグラムや100ミリグラムなど容量に種類があるが、投与量は患者の体格によって異なり、使い切らない場合は細菌汚染の可能性などを考慮して廃棄されるケースがほとんどだ。

米国などでは分割使用の取り組みが進んでおり、厚労省も18年に残薬を使用するための指針をまとめた。岩本氏は「抗がん剤は高額な新薬の登場が相次ぎ、今後も薬剤費の増加が見込まれる。安全に配慮した上で、分割使用を促進するさらなる対策が必要だ」と話している。

(佐藤淳一郎、金子冴月)

[日本経済新聞朝刊2020年1月20日付]

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