ICT施工の現場元監督 今は営業もエンジニアも日立建機日本 種慎司さん

慎重にチェック

ただ前職では工程や仕上がり、安全管理などあらゆる部分に配慮が必要で「こなすことに精いっぱい」。何か1つの業務に特化したいと考える中でICT施工の存在を知り、今度はメーカーのエンジニアとしてICT施工を提案する側の世界に飛び込んだ。

重視しているのは「臆病といえるほど慎重になること」だ。ICT施工には衛星測位システムや測量機器、ICT建機など様々な機器が介在する。さらに現場の状況によってデータなどに解明できないずれが生じることもある。

わずかなずれでも、見逃せば施工全体の損失につながりかねない。基準局の補正情報が間違っていないかなどを繰り返しチェックする癖は、前職で得たものだ。

それでも先端技術を扱うだけに、予期せぬトラブルに見舞われたこともある。盛り土の仕上げの最中に機器が不調となり、現場作業が進まなくなった。直したと思えば故障する状態が続き「こんなことじゃ困るんだ!」と建機のオペレーターに怒鳴られた。

だが根気強く、月に何度も遠方の現場に足を運び、建機の作業が止まらないよう支援した。「丁張り」と呼ばれる準備が遅れていると思えば、自ら手伝うなど、現場と一体で作業を仕上げた。

半年後、別の現場の営業に赴くと、トラブルが起きた案件と同じ担当者が現れた。迷惑をかけたと気後れしたが、「また頼むよ」と声をかけられ驚いた。「投げ出さずにやったことで、信頼してもらえたのでは」と振り返る。

「ニーズ分かる」

「種さんがいるから日立建機の製品を買うよ」。こうした顧客の声が励みだ。

「自分の経験から建設会社のニーズが分かる」と話す種さん。前職で得た視点はそれだけではない。下請け会社との連携もその一つだ。「相手企業の規模を見るのではなく、人を見て行動する」。それが鉄則だという。人手不足が深刻な建設業界を救うICT施工だが、デジタル分野といえど普及をけん引するのは、実は種さんのような「血の通った営業」なのだろう。

(西岡杏)

たね・しんじ
2007年に広島工業大卒。中国地方の大手建設会社で道路や橋梁工事などの現場監督を担当。17年に日立建機日本に入社し、中国地方でICT施工のエンジニアとして提案営業などを担う。

[日経産業新聞2020年1月17日付]

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