続く子どものせき、ぜんそくか確認 アレルギー性多く
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と息苦しくなるぜんそく。子どもは特に呼吸器が十分に発達していないため症状が出やすい。9割はダニや花粉などがきっかけとなって気道に炎症が起こるアレルギー性とされる。症状のない子どもと同じように過ごすためには、発作が起きないよう継続的な治療と自己管理を両立させることが重要だ。
「風邪かと思い気づかなかった」。都内に住む30歳代の母親は話す。4歳の子は体調が悪くなるとせきがひどく、夜眠れない状態が続いた。かかりつけの病院では風邪といわれていたが小児科を受診するとぜんそくの疑いと診断された。
熱が下がっても「ゼーゼー」といった症状が続いたり、せきが長引いたりしていれば、ぜんそくの恐れがある。明け方に症状が出る場合も多い。こうした子どもの気道は炎症を起こして過敏になっており、刺激を受けると気道がさらに狭まり、呼吸が苦しくなる。
ほとんどはアレルギー性とされ、原因となるアレルゲンはさまざまだ。花粉やダニ、ホコリなどのハウスダスト、ペットの毛などが考えられる。たばこや花火の煙が原因のこともある。
文部科学省の学校保健統計調査によると、2019年度の子どものぜんそくの発症率は、幼稚園で1.83%、小学校で3.37%だった。11年度前後から減少傾向に転じているが、30年前の1990年と比べると数倍の水準にある。
東京都立小児総合医療センターの成田雅美アレルギー科医長は「発作が起きていなくても気道は炎症している。普段から治療をすることが大切」と話す。慢性的な炎症を放置すると、気道が狭い状態のままで元に戻りにくくなるという。
気道の炎症を抑えて発作を予防するステロイド薬や発作が起きた際に気管支を広げる気管支拡張薬などで治療するのが一般的だ。症状をコントロールすれば、ぜんそくにかかっていない子どもと同じように日常生活を過ごせるようになる。
血液検査などでアレルゲンを特定すれば、刺激を避けるよう生活環境を整えることもできる。ダニなどハウスダストが原因なら、カーペットや布製のソファを取り除く。定期的に窓を開けて換気し、部屋の湿度を下げることも有効だ。
日記による管理も小学生に適しているという。思い切り空気を吸いこんで一気に息を吐き出した時の息のスピードを測り、その値を記録する。「ピークフロー値」と呼ばれ、気道が狭くなると値が小さくなる。
成田氏は「毎日、少なくとも朝と夕の2回計測することが望ましい」と話す。健康な状態の値と比べて8割を下回ると注意が必要だという。医師の指示に従い気管支拡張薬を使うことなどを判断する。
ぜんそくにかかる人の80~90%は6歳までに発症するとされる。保育所や幼稚園に入ると風邪をひくことが増え、ぜんそくの症状も出やすくなるという。
ぜんそくとわかっていれば、保育所には服薬の状況やアレルゲンなどの注意事項、急な発作が起きた際の対応方法を伝えておく。自分で苦しいと伝えられない乳児の場合、「ミルクを飲まない」とか「せき込んで眠れない」といった発作時の症状を共有しておけば、保育所側も対応しやすい。
運動後に子どものせきがおさまらないなどの様子をみて、保育所や幼稚園側がぜんそくの兆候に気がつく場合もある。
厚生労働省は保育所向けにアレルギー対応のガイドラインを策定。子どもへの対処方法をまとめて用意しておくことや、発作を抑える薬の吸入時に使う補助器の使い方を職員が習得することを促している。
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アトピー性皮膚炎 合併も
アレルギー疾患にはぜんそくのほか、鼻炎や結膜炎、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどがある。子どもの場合、どれか1つだけ発症するケースは少なく合併していることが多い。
乳児のころにアトピー性皮膚炎がある場合、発育につれて食物アレルギーやぜんそく、鼻炎などほかのアレルギー疾患を発症する確率が高くなることもわかっているという。成長に応じて次から次へとアレルギー性の疾患が発症することを「アレルギーマーチ(アレルギーの行進)」と呼ぶ。
国立成育医療研究センターの研究では、新生児のころから保湿剤を塗布することで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを3割以上軽減できた。その後の多くの研究でアトピー性皮膚炎の発症が、卵アレルギーの発症と関連することも確認された。アトピー性皮膚炎を予防することでぜんそくなどほかのアレルギー疾患も防げる可能性もある。
(新井惇太郎)
[日本経済新聞夕刊2020年1月15日付]
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