もうショベルは用意した? 家庭でできる大雪対策
地震や台風、豪雨と同様、突然の大雪で普段の生活に影響がでることがある。雪に慣れない地域では、対策を怠ると事故など大ごとになる可能性も。見落としている備えがないか、確認しよう。
「週間天気予報で、大雪が降ると分かれば1週間前から準備を」。危機管理教育研究所(東京・中央)代表で危機管理アドバイザーの国崎信江さんはアドバイスする。
災害備蓄としては「基本的には地震と同じと考えていい」と国崎さん。家族に合わせた食事や衣類などを備蓄しているだろう。
必要なものが欠けていないかを確認し、買い物は済ませておく。暖をとれるカイロや厚手の衣類は備えておきたい。
透明バッグで水ぬれを防止
備え方も確認しよう。ラジオやスマートフォンのバッテリーパックなどは、雪が溶けてぬれると使えなくなる心配がある。機器類や下着類はチャック付きの袋などに小分けしておく。アウトドア用品のモンベル(大阪市)東京広報の金森智さんは助けを呼ぶホイッスル、手が使えるヘッドライト、ばんそうこう、万能ナイフなどは透明の水筒にまとめることをすすめる。「探しやすいだけでなく、いざというとき水筒にもなる」
近年の自然災害の傾向を考えると、以前は雪があまり降らなかった地域でも「雪かき用のショベルとバケツは、防災道具として家に置いておきたい」と国崎さん。園芸用ではなく、雪をすくうのに適している角型でアルミ製の、軽いショベルがおすすめという。
また、自動車に乗るなら冬用タイヤか、チェーンの装着が必須だ。さらに「火災保険や共済で雪災による補償範囲の確認をしておいたほうがよい」と国崎さん。特に車庫については降雪が少ない地域では雪の重みの耐久性が不十分な車庫もある。天井が壊れたり、屋根が変形したりする可能性がある。週間予報で積雪の予報が出たら調べよう。
2日前ぐらいになると予報の精度も増す。交通網の乱れを想定し、予定のキャンセルや調整をしよう。
大雪の日の通学や通勤はいま一度、考えたい。学校や会社に対応を確認しておく。国崎さんは「大雪が予想されているときには休むことも検討してほしい」という。出勤しても帰宅できない帰宅困難になるおそれがあるからだ。
また、屋外の水道管は気温が上がらない日が続き、目安として氷点下4度以下になると凍結する可能性が出てくる。断熱テープで巻くほか、量水器ボックスは発泡スチロールを隙間に入れて覆うなどの防寒対策を。国崎さんによると水をほんの少し出し続けるのも有効という。
大雪の当日。玄関や車庫前は除雪を心がけよう。「2時間おき、降る量によっては1時間おきに作業したほうがよい」(国崎さん)。雪が積もったり、凍ったりして出入り口をふさがれると急病などで、どうしても外出しなければならないときに困るからだ。
集合住宅では、非常階段やバルコニーに積もる雪の除雪の仕方に注意したい。不用意に下に落とすと、通行人や車に落雪や落氷する危険がある。いったんバケツに集め、風呂場に運んで水や湯で溶かすほうが無難だ。
体冷えぬよう重ね着で調整
急病だけでなく、雪の日に地震が重なる「複合災害」が起こらないとも限らない。緊急の外出も想定しておく。
雪道は靴底がツルリとした革靴を避け、防水性がありゴム底で凹凸の深い靴を選ぶ。靴底に装着する雪道用の滑り止めをつけるほか、「山歩きで使う杖(ストック)も役立つ。アウトドア用のヘルメットも安心」と金森さん。
同時に、「冬は吹き付ける風や水にぬれて体を冷やさない装備が大切」と金森さん。下着はウールやポリエステルなど保温力が高く、汗をかいても冷えにくい素材を身につける。綿はぬれると体温を奪うので避ける。上半身はフリースやウールのセーターなど保温力の高い服を着て、防水性と断熱性のあるフード付きジャケットをはおる。下半身はトレッキング用などストレッチ性のあるズボンがベスト。雨や雪の中を歩くときは防水性のあるパンツを重ね着し、手袋とマフラー、靴下で手首、首、足首を温める。
温かい服装で、足幅は狭く、小股で足裏を垂直に地面に押し付けるように歩こう。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2020年1月11日付]
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