染み込んだ味噌ダレのうまみ 秋田・鹿角ホルモン

ホルモンと甘辛いたれの味がキャベツや木綿豆腐に染み込んだホルモン鍋(ホルモン幸楽)
ホルモンと甘辛いたれの味がキャベツや木綿豆腐に染み込んだホルモン鍋(ホルモン幸楽)

秋田県鹿角市の鹿角ホルモンは、味噌ベースの甘辛いたれに漬け込んだ豚や牛の内臓をジンギスカン鍋で焼いて煮て食べる。ホルモンに蓋をするようにのせたキャベツから水分が出て、煮汁をスプーンですくってかける。うまみが鍋の周りに置いた木綿豆腐に染み込む。白いご飯やビールがどんどん進む逸品だ。

煮汁をスプーンですくってかけ、味を具材に染み込ませるホルモン幸楽の中島社長

鹿角市ではJR花輪線の鹿角花輪駅の近くにある花千鳥とホルモン幸楽が双璧だ。訪れたホルモン幸楽は、中島信明社長の祖母が1950年ごろに創業した。祖母はホルモンを食べる文化の根付いた兵庫県明石市から姉を頼りに鹿角に移り住んだ。

韓国のプルコギにヒントを得てジンギスカン鍋でホルモンを出し始めたのが52年だ。ホルモンになじみのなかった鹿角では当初はボウル1杯も売れなかった。だが、周辺の鉱山で働く労働者や出稼ぎの人たちが店の外に漂う甘い味噌の香りに誘われて集まるようになり、「家より先に立ち寄る店」として知れ渡った。

ホルモン伸栄ではホルモン幸楽と同じ味が楽しめる

豚の大腸、小腸、たんに牛のミノ、ハツ、センマイを組み合わせる。味付けは味噌ベースでしょうゆ、トウガラシ、にんにくと「企業秘密」。「基本的な味はずっと変わらない。ホルモンの臭みがないのは全部手作業で丁寧に洗い、ぬめりをなくしているから」と中島社長は説明する。

ホルモン幸楽にほれ込んだのがホルモン伸栄(秋田市)の米森勝男社長だ。土産品卸の営業マンだった米森社長は鹿角市を訪れるたびにホルモン幸楽に立ち寄った。「ご飯にも合うしアルコールにも合う。秋田でやれば受ける」

中島社長の父に直談判し、2003年に脱サラして店を開いた。秋田県庁や秋田市役所が近い現在の店に11年に移転。看板には「花輪幸楽より直送」をうたう。県庁職員のほか、バドミントンやバスケットボールといった地元プロチームの選手も訪れる。

鹿角ホルモンはアレンジの自由度が高い。キムチを入れると味が変わる。持ち帰りホルモンを買った客の中にはニラ、ネギ、タマネギを入れる人もいるという。

しめはうどんが定番だ。中島社長は「ホルモンとたれの味が染み込み、喜んで食べてもらえる」と話す。チーズを入れてリゾット風、卵とご飯でおじや、ホルモン丼……。アレンジで食欲が増す。

ホルモンは網や鉄板で焼くのが定番と思っていた。鹿角ホルモンは他では見られない食べ方だ。だまされたと思って一度食べてみてほしい。

<マメ知識>持ち帰りが人気
ホルモン幸楽は秋田県の鹿角市、大館市、小坂町、盛岡市に計5店を展開する。ジンギスカン鍋も販売しており、鹿角では持ち帰りホルモンを自宅で調理する家庭も多い。ネットや電話で地方発送をしており、「お盆や正月などの前は一気に発送量が増える」(中島社長)。このほか全国約40店の飲食店にホルモンを卸しており、東京では西荻窪の秋田ほるもん酒場、五反田のわったりぼうずなどで楽しめるという。ホルモン伸栄はホルモン煮込みをランチタイムや秋田竿燈まつりの屋台で提供している。

(秋田支局長 早川淳)

[日本経済新聞夕刊2020年1月9日付]