元料理人、オフィスの課題さばく 幅広い経験土台に東名 中川原諒大さん

東名の中川原諒大さん
東名の中川原諒大さん

三重県四日市市に本社を置く東名は中小企業向けにインターネット回線やコピー機、発光ダイオード(LED)照明などを納入する。トップ級の営業実績を誇るのが中川原諒大さん(33)だ。元料理人で2012年に中途入社した異色の経歴を持つ。前職で磨いた対応力や観察眼を武器に相手のニーズを見極め、契約をつかむ。

同社のビジネスの基盤は中小向けに展開しているネット回線事業だ。収益が安定して積み上がるストック型の業務で、1度納入すると解約率は低い。営業マンとして回線を売り込みながら、コピー機やパソコン、LED照明といった備品も納めていく。

勝負は訪問前から

中川原さんは「営業に行く前から勝負は始まっている」と話す。例えば「グーグルマップ」のストリートビューで訪問先の外観をチェック。「特にホームページがない会社を訪ねる際は規模感を測る大事な情報源だ」という。

「この会社はまだ蛍光灯からLED照明に切り替えてないな」などと思いを巡らせるわけだ。営業車で行く場合は、いったん訪問先の前を通り過ぎる。周辺にも会話のネタがないかを観察する。

玄関に入ってからも情報収集は続く。商談相手が現れるまで視線は360度、動き続ける。壁に掲げてある社訓から、机上のパソコン、置いてある本や雑誌まで「視野に入るあらゆるものを観察する」のが中川原流だ。

雑談のネタにするのはもちろん、何を相手に買ってもらえそうか、見極めるための材料は多い方がいい。相手に「そういえば、コピー機が古くなってきたから買い替え時かな」と、気づいてもらえるように話を振り向けていく。

取引開始後のフォローも忘れない。備品などの納入後、取引先から特に連絡がなくても、1~2カ月以内には足を運ぶ。備品に不具合などがなければ、雑談を交わすだけで帰ることもある。それでも丁寧に取引先を回るのは、過去の苦い経験があるからだ。

入社から2年目のことだ。パソコンのセキュリティールーターを愛知県内の鉄工所に納めた。その後、先方から何度か連絡があり「ネットの通信速度が落ちているようだ。そのうち来てくれないか」と言われていた。だが「急は要さない」と判断。新規の顧客開拓を優先して歩いた。

結果、この社長は憤慨し、中川原さんを「出入り禁止」扱いにした。「社長は私のキャラクターを買ってくれていた。その私が勧めたから購入したのに、裏切られたと考えたのだろう」と振り返る。契約が破棄されることはなかったが、このトラブル以降、中川原さんの上司が定期的にこの会社を訪問している。

中川原さんが他にも心がけているのは、会話時に「2人の自分」を意識することだ。相手と話をしながら、もう一人の自分を脇に置いて状況を客観視する。こうしたワザを身に付けた背景には、レストランでの調理師や、小売店での接客の経験がある。

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