ブーツを自宅で洗う サッとすすぎ、仕上げに油分補給
洗濯家 中村祐一
寒さが一段と増し、防寒の観点からもブーツを履く機会が増える時期となった。本革はもちろん、ムートンや合皮を使ったブーツを洗濯することのイメージは浮かぶだろうか? 少しだけ手をかければ、自宅で手入れが可能だ。
まずはブラシなどで靴裏の泥などを落としておく。おしゃれ着用の洗剤を規定量計り、水に溶かして洗剤液を作る。
極端に汚れがひどくない場合には、この洗剤液を含ませたスポンジで全体を洗っていく。その後、水を含ませて絞ったタオルで拭き取る。最後に、オイルで油分を補給する。これだけでも表面の艶はかなりよみがえり、全体的にさっぱりとするはずだ。
汚れやニオイがひどいときは全体を水に漬けて洗う。革やムートンなどのブーツは洗ううちに色落ちすることが多い。2色以上使っているものは色移りの可能性があるので、洗濯には注意が必要だ。
基本的に洗濯後のブーツは水分や油分を含んで色が濃くなる。色が濃くなったり、シミになったりするのが怖い場合は、自宅での洗濯はおすすめしない。専門家に任せよう。
ムートン素材は、優しくマッサージをするように本体を洗っていく。洗剤液が全体に浸透したら、すすぎに移る。あまり長時間洗剤液に漬けていると、革から油分が落ちすぎて硬くなったり、縮みが起こりやすくなったりする。すすぎはサッと済ませて、素材の風合いを失わないように注意したい。
仕上げに柔軟剤を溶かした水に漬ける。この時にオイルやクリームを使うと、洗濯中に抜けた油分を補うことができる。オイルをあらかじめ柔軟剤と混ぜ合わせてからお湯に溶かすと、油が分離しない。ラノリンなど動物性のオイルがおすすめだ。
タオルでよく拭き取って脱水する。ムートンブーツなどは水分をたくさん含むので、洗濯機で脱水して水気を切るとよい。洗濯機内でバランスを取るように、ブーツを均等に並べる。ブーツが傷まないように1分ほど脱水したら、スイッチを止めて様子を見る。取り出してブーツの形を整えて、同様に脱水を2~3回繰り返す。
乾く間に縮みが出ないように、靴の中にタオルや新聞を詰めて陰干しする。張りをつくるようにして形を整えよう。シワがついたまま乾かすと、後にシワが残る。
乾いた後にブラッシングをすると、表面の柔らかさが回復するのでおすすめだ。塗装が施されている革は、必要に応じて靴用クリームを塗り、油分を補給してからブラッシングするとよい。
ブーツの洗濯を受け付けるクリーニング店も増えてきた。大事なものは専門家に相談することを勧めたい。自分で洗う時間が取れない人も、クリーニング店を利用するのもいいだろう。洗って清潔に保ち、長く愛用してほしい。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2020年1月7日付]
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