藤井聡太七段と上野愛咲美女流二冠 棋界ホープの抱負
将棋界、囲碁界で躍動する10代のホープ。その筆頭格である藤井聡太七段(17)と、上野愛咲美(あさみ)女流二冠(18)に2020年の抱負を聞いた。
研鑽積み差縮める
――20年のテーマは。
「『研鑽(けんさん)』です。19年は(史上最年少タイトル挑戦まであと一歩と迫った)王将リーグなどで広瀬章人竜王(当時)や豊島将之名人(その後、竜王を獲得)といったトップ棋士と対戦する機会も多かったんですけど、その中で差を感じた場面もあったので、20年は研鑽を積むことで、その差を縮めていきたいなと思っています」
――自身の成長と、現状の課題をどう見ますか。
「中盤における形勢判断と時間配分が課題と思っている。序中盤の指し手の精度は全体的に上がってきている。どういう形が好形なのか、感覚が身についてきたかなと」
――19年、印象に残っている対局は。
「(連覇を達成した)朝日杯の決勝、渡辺明三冠との将棋は秒読みが長く続いたが、そうした中でも落ち着いて指すことができた。竜王戦(決勝トーナメント)の豊島名人との1局は、序盤は比較的指せていたんですが、中盤以降、豊島名人との差を感じました」
――将棋界全体としてソフトの活用法はまだ手探りの状況です。圧倒的な強さを身につけたソフトと、どう付き合っていきますか。
「ソフトは評価値と読み筋を教えてくれますが、なんでそういう点数になるかは教えてくれない。(評価値や読み筋の解釈を)自分なりに考えて理解するのが必要なことかなと思っています」
――高校卒業後の方針は。
「大学進学はあまり考えていないです。(愛知県瀬戸市の実家から東京や大阪に出ての)一人暮らしは自分の(炊事洗濯などの)実力では厳しいかと……」
(聞き手は柏崎海一郎)
楽しく元気に邁進
――20年のテーマに「邁進(まいしん)」を掲げました。
「19年は本当に運に助けられた1年でした。竜星戦は(女性初の全棋士参加棋戦の決勝進出という)奇跡的な結果を残せて、とても良かったです。トーナメント表に(村川大介十段、高尾紳路九段、許家元八段ら)すごい先生が並んでいて、そこに入れただけでうれしかった。19年はけっこう元気に頑張ったので、20年はもっと楽しく元気な碁を打ちたいです」
――厳しい攻めの棋風が注目されました。
「(攻撃が強いという意味で)ハンマーとよばれるのは、うれしいです。女流本因坊戦で藤沢里菜先生と対局して感じたのは、ヨセの違いです。形勢が良さそうなところから、巧みな技でやられました。ヨセが課題ですね」
――19年は女性が躍進しました。
「里菜先生が先に活躍して、(リーグ入り目前に迫った)名人戦、(本戦での女性初勝利を挙げた)天元戦と結果を出しています。なんか私も頑張ろうというか、チャンスがあると感じます」
――対局の調整法は。
「プロ入り前から対局日の朝になわとびをしています。運動すると(集中が)違うように感じます。最近は験を担いで777回にしています」
――中国・韓国勢との距離感は感じますか。
「安定感があり、強いなと思いますが、無理っていう相手はいません。しっかり研究して運も付けば、奇跡的に勝てることもあるんじゃないかな。参加するからには結果を残したい。韓国語や中国語を勉強して、少しでも話せたらいいですね」
(聞き手は山川公生)
[日本経済新聞夕刊2020年1月6日付]
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